□千年桜
1ページ/2ページ

ゆらり ひらり 桜舞い散る
貴方 散りゆく道にさよなら
ゆらり ひらり 桜舞い散る
最期に消えた 桜の下で

さくら さくら 散りゆく命
さくら さくら 紅く散る桜よ



■ 千 年 桜 ■



頭上に乱れ咲き誇るは、見事な千年桜。
千年も生きてきたエドヒガンの大木は沖田を圧巻する。
残酷なまでの美しさに言葉が出ない。
自然が作り出した生命の息吹。
はらりはらりと落ちてくる花弁を手のひらで受け取る。
薄桃色の小さな花弁。
それをふぅっと息で飛ばした。
「なあ、総司よ。知ってるか?桜の下には死体が埋まっているそうだ。桜はその血を啜り、紅く色づくらしい」
土方は懐に忍ばせておいた煙管を吹かし、そう言った。
「ならば、私が死んだら桜の下に埋めてください。毎年毎年、貴方を想い、咲き誇るでしょう。そんな私を毎年見に来てくださいね」
穏やかな笑みを浮かべる沖田。
「俺より先に死ぬ前提か?」
沖田の笑みは崩れない。
「きっと私は貴方を守れない。そんな気がするんです」
「お前が俺を守れないなら、俺がお前を守ってやるさ」
真摯な土方の瞳に嘘はない。
沖田はくすくすと笑った。
「土方さんには敵いませんね」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ