□雪虫
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ゆきや こんこん あられや こんこん
ふっては ふっては ずんずんつもる
やまものはらも わたぼうしかぶり
かれきのこらず はながさく






「土方さーん♡」
副長室の障子を開けると、火事かと思う程の煙に思わずむせる。
「なんですか、この煙。少しは換気してくださいよ」
けほけほと咳き込みながら、障子を開け放つ。
「開けたら寒いだろうが」
文机に向かい、不機嫌そうに返事をする。
山の様に積れている書状に、仕事を多さを見て取れた。
「お仕事溜まってますねえ」
「近藤さんが妾宅から帰ってきやしねぇ」
忌々しく煙管を吸う。
ある程度煙を追い出すと、沖田は障子を閉めた。
「お茶でもお持ちしましょうか?」
「いや、構わん」
書き損じたのか、紙をくしゃりと握り放り投げた。
ああ、苛々しているんだなと悟った。
沖田は土方の背中にもたれ、身を預ける。
背中越しに伝わる土方の温もり。
その温かみが沖田を安心させる。
また書き損じが部屋に転がった。
「ねえ、土方さん。少し散歩へ行きませんか?いい気分転換になると思うんですけど…」
「…お前、俺を財布扱いする気だろ」
「あ、ばれちゃいました?だって私、お金ないんですもん」
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