□ある夫婦の日常
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むくりと、土方が布団から起き出す。
今日は少し寝過ごしてしまったようだ。
陽はとうに高い。
もう昼前だろう。
ふと、髪に違和感を感じる。
触ってみると、三つ編みに編まれている。
なかなか起きない自分への、沖田のいたずらだろう。
こんないたずらは日常茶飯事で、怒る気力はとうに失せた。
夜着から、いつもの黒の着物に着替えようとした時、それは突然目に入った。
明け方まで書き綴った書状に、豚の絵が描いてある。
「………総司いいいいっ!!!」
土方の絶叫が屯所に響き渡った。

ドスドスと音をさせて、沖田の部屋へ来る。
が、いたずら主はそこにはいない。
だが、すぐ今までそこにいたという証しの、食べかけの饅頭が残されている。
逃げられたか。
でも敵は近い。
土方の野生の勘がそう告げていた。

パタパタと音をたてて、沖田が廊下を走る。
目指すは山崎の部屋。
「山崎さーん、ちょっとかくまってくださーい」
座って書物を読んでいる山崎の部屋に上がり込む。
「押入れ借りますね。土方さんが来たら内緒ですよ?」
そう言って、襖を開けて入ってしまった。
程なくして、ドスドスと歩く音が聞こえる。
それは山崎の部屋の前で止まった。
「山崎くん、総司は見なかったか?」
しばしの沈黙が流れる。
「………いえ、知りません」
「そうか、邪魔をしたな」
土方は踵を返した。
「いやー、てっきり差し出されるかと思っちゃいましたあ」
襖が開き、押入れから沖田が出てくる。
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