□処女雪
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しんしんと
降り積もるは真白な雪。
すぐに溶けてしまう
淡い雪はまるで儚い君のよう。



遠くで鶏が鳴く声が聞こえる。
その声で沖田は目覚めた。
重たい目蓋を開け、ごしごしと眠い目を擦る。
部屋は冷たい空気で冷え切っていた。
沖田は、隣りで眠る土方を起こさないようにそっと布団から出る。
掛けていた羽織りを着て、そっと障子を開けると。
「…うわ…っ」
眼下に広がるは、真白な銀世界。
見事な雪化粧に感嘆の声が上がる。
通りで寒いハズだ。
土方が起きたときに寒くないように、火鉢に火を灯す。
そして、土方の羽織りを布団の上に掛ける。
「これでよし!」
沖田は再び、障子際から外を眺める。
そこから、外へと飛び出した。
裸足で新雪を踏み締める。
心臓が飛び上がるくらい冷たいけれど、何故だかそれは気にならない。
雪を両手ですくい上げ、パァッと空中に放り投げて、落ちてくる雪を体で受け止める。
今度は雪の上にパタリと倒れ込む。
全身を針で刺されているような冷たさに、身が芯から縮み上がる。
それでも何だか気持ちが良かった。
「おい、こら、何やってんだ」
土方の不機嫌な声が聞こえてきた。
何時の間に起きたのだろうか。
雪に塗れて無邪気に遊ぶ沖田に、土方は心底呆れ顔だ。
「早く部屋へ入れ。風邪をひく」
煙管を吹かしながら、そう言った。
「はあーい」
沖田は早朝からご機嫌だ。
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