□奈落の花
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抜け出してって 抜け出してって
悲しすぎる運命から
あなたは 奈落の花じゃない
そんな場所で
咲かないで 咲かないで
からめとられて行かないで

誰がこの手を にぎっているの?
誰がこの髪を なでているの?

飛び越えてって 飛び越えてって
運命のはぐるまから
あなたは 奈落の花じゃない
そんな場所で
散らないで 散らないで



「ゴホ…ッ、ゴホ…ッ」
激しく咳き込む沖田の背中を山崎は優しくさする。
「大丈夫ですか、沖田さん」
白湯を渡し、ゆっくりと飲ませる。
落ち着きを取り戻した沖田が山崎に「ありがとうございます」と、礼を言った。

沖田の病状は夏を過ぎた頃から、急に悪化し始めた。
みるみると痩せていく体。
胸部は肉が削げ落ち、あばらが浮き出てしまっている。
山崎が作る食事では、体の衰えに着いていけなくなっている。
もう少し肉がつく食事に変えなくては。
山崎は細く折れそうな体を見て、小さく溜め息をついた。

沖田は毎日、障子の外を見て過ごす。
あの人がこの部屋に来るのを待ちわびて。
だけども、その人はこの部屋には来ない。
待てど暮らせど、土方は来ない。
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