□夜祭
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土方と宗次郎は菊一文字事件以降、宗次郎が土方に懐き、随分仲良くなった。
宗次郎も笑顔が多くなり、以前の冷めた子供らしくない言動も少なくなっていた。

石田散薬の仕事が終わり、いつもと同じく近藤宅を訪れる。
土方の姿を見つけるや否や、走って飛び付いてきた。
「どうした、ソージ」
「夜祭りに連れて行ってくださいっ」
そういえば、神社が随分賑わっていた気がする。
「勝っちゃんに連れて行ってもらえばいいだろ」
「近藤さんは出稽古で居ないんです」
「そうか、仕方ねえな」
人混みは嫌いだったが、宗次郎の頼みは断れない。
「ほら、行くぞ」
宗次郎の小さな手を取り、歩き出した。

神社が近づいてくるにつれ、太鼓と笛の賑やかなお囃子が聞こえてくる。
灯りの灯された色とりどりの提灯が二人を招いていた。
「歳さん!」
後ろから女が声をかけてきた。
「なんだよ、おマツか」
一年程前に2、3度寝た女だ。
「突然、ぱったり来なくなっちゃうんだもの」
飽きたから、なんて本人には言えない。
土方の後ろに隠れていた宗次郎が少し顔を出す。
「まあ、可愛らしい女の子だこと。まさか、歳さんの…?!」
「……まあな」
どうやったら17で9つのガキが出来るんだ。
しかし、言い訳するのも面倒なので、そういう事にしておく事にした。
どうせとっくに捨てた女だ。
どうこう思われようが支障はない。
「行くぞ、ソージ。じゃあな」
固まって動かない女に背を向け、宗次郎の手を引っ張る。
宗次郎が女に小さく礼をした。
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