□狂宴☆
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なんでこんな事になっちゃったかなあ。
沖田のしやなかな体を見ながら、永倉は深い溜息を吐いた。
「…駄目ですよ、永倉さん。ちゃんと集中してくれないと」
「ああ、ごめん、ごめん。上手だよ、総司」
沖田の艶やかな長い髪を撫でる。
嬉しそうに微笑むと、永倉の股間に顔を埋めた。




開けた障子からそよそよと入ってくる風が気持ちいい。
庭先では夏虫が元気に鳴いている。
仕事なんぞ放り出して、一句読みたい気分だ。
しかし、文机には残された書状が山の様に積まれている。
…ったく、近藤さんは妾宅でお楽しみ中なのに、なんで俺ばっかりこんなに仕事があるってんだ…
ブツブツ文句言いながら、手元に置いていた煙管を吸い、白い煙を吐いた。

遠くの方から足音が聞こえてくる。
こんな時間にくるのはどうせあいつぐらいしかいない。
そもそも副長室に好き好んでくるもの好きなんていない。
あいつだけだ。
丁度いい。
茶でも淹れてもらおう。
あいつの淹れる茶は美味い。
遠かった足音は近くなり、やっとその人物が現れた。
土方の予想通り沖田だ。
「…遅くまでお仕事ご苦労様です」
「ああ、ありがとよ。ついてで悪いが茶でも……」と言いかけた時、上からひらりひらりとなにかが落ちてきた。
「なんだ?」
「春日という遊女さんから恋文ですよ」
……ああ、またかと顔をしかめる。
会合で行った席で土方に酌をした遊女だ。
一目で土方を気に入ったらしく、事あるごとに文を送りつけてくる。
面倒な事になりたくなかった為、一度も返信はしていない。
勿論、廓にも顔を出してはいない。
「随分とおモテになりますね、色男さんは」
沖田の顔にはいつもの笑顔はなく、背筋が凍る様な冷たい目をしている。
まずい。
これはまずい。
普段にこにこ笑顔で温厚な分、怒った沖田はタチが悪いのだ。
正直、何を仕出かすかわからない。
「俺は返事も出してねえし、会いに行ってもねえぞ」
「そういえば、先日も桔梗という遊女さんから恋文を貰っていましたね」
駄目だ。
聞く耳持たずだ。
「その前は羽衣さんでしたね」
……よく覚えてやがるな……。
「早く返事をお書きなさいな、色男さん」
ふんっと鼻を鳴らして去って行った。
……さて、どうしたものか。
どうやって機嫌を取ろうか。
菓子程度では機嫌を直さないだろう。
土方は頭を抱えた。
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