文
□忘れな草
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ーーーそれは悲劇だった。
土方への絶対なる忠誠心から起こった悲劇だった。
ころんと音を立てて落ちた竹光。
後ろから山南を貫いた刀は震えていた。
震える手で愛刀を引き抜くと、切っ先から零れる紅い雫。
「…見事じゃないか」
君にキバを向くものは、例え身内であろうと容赦なく切り捨てる。
君の教育のたまものだ。
山南は土方に向けてそう言った。
そして、「後悔してくれ」とも言った。
灼熱の炎に焼かれているかのように痛む腹に顔が苦痛で歪む。
刀を持ったまま、立ち尽くす沖田に楽にしてくれと介錯を願い出る。
君の介錯で死ねるのなら本望だーーー
振り上げられる銀に輝く刀。
ザンッと音がして、転がる山南の首。
切り離された胴体から紅い飛沫が吹き出し、呆然と座り込んだ土方を濡らした。
「………もう介錯なんて、二度と嫌です…」
柄を握りしめ、絞り出した声は震えていた。