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□音
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しばらく見ていない姿が目の前を歩いていった。

「よお、天然くん」

からかいのつもりで声をかけた。
しかし、思い切り無視をくらう。

いらついて正面から相手見ると、耳に治療の跡があった。

「おま、その怪我どうした!!」

少し焦った。

今まで休んでたけどどうしてた、だとか、久しぶりに会ったとかはどうでも良かった。

誰にやられた、痛くないか、大丈夫か。

その首の痣はなんだ。

その方が大きかった。

「おい!なんだよその怪我は!」

何も答えないので掴みかかり揺さぶりながら聞いたが、

「……」

沈黙。
曖昧に笑い返すだけ。

なんでだ。

なぜ何も言わない。

俺に言えないようなことなのか。

負の感情が渦巻き始めた時、深夜が慌てた様子でこちらにかけてきた。

「はぁ、はぁ……あぁ〜」

息が切れている。
ずっと走り回っていたのだろうか。

深夜は息が整うまで深呼吸をし、話し始めた。

「やっと見つけたよ、もう。
勝手に居なくなっちゃダメだろ?一人で歩き回るなって医者に言われてるじゃないか」

伊澄は申し訳なさそうに笑う。

「さっきからなんで話さない」

少しキレ気味で言ってしまった。

すると彼は目線を下げる。

先程から目を合わせない。

「ちょっとグレンやめなよ──」
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