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□君と僕と創作バトン
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○今後も宜しく

「「お疲れ様でした!!」」

スタッフの揃った声が番組収録終了の合図を身体に浸透させる。
シャークは大きく伸びをして、肩の力を抜き、一息着いたかと思うと次々にスタジオを後にする先輩方にお疲れ様です!!と丁寧に頭を下げた。
挨拶から始まり挨拶に終わるといっても過言でないこの業界、本当に気を抜くのは家に帰るまでお預けのようだ。
溜め息を軽くつきながら、控室に向かい、途中自販機に立ち寄る。
いつもの炭酸飲料のボタンに赤いランプが余計についていた。



「シャ、ア、ク、さん!!」

ぴと。

「ギャー!!!!」
「うぁああ!!!?」

突然の冷感。
奇声を上げながら振り向いた先には。

「も、モエ…さん!?」
「びっ…くり、したじゃない!!ひどいひどい!!」
「すみません…!!」

胸に手を当て深く呼吸する先輩の姿。
先輩といっても実齢はシャークの方が幾年か上なのだが。

「本当すみません!」
「…いいよ、私が先に声かけたんだしね。はい、」

モエは苦笑しながら黄色い缶を差し出す。

「先輩モエちゃんから差し入れだよ!」
「あ…ありがとうございます、いただきます」
「どうぞどうぞ」

偶然かわざとか。
シャークは売り切れてたお気に入りの炭酸飲料に口をつける。
柑橘系の爽やかな香りと微かな甘さ、刺激的な喉越しが疲れを癒していく。

「…シャークさん、お仕事はなれた?」
「はい、まぁ…」
「ならよかった、シャークさんすじがいいから多分これからもっと忙しくなるよ!直ぐに人気になっちゃうね?」
「そんな、まだまだですよ。全然モエさんに及ばないですし」
「でも明日はおんなじ番組だしね、何だか追い付かれちゃった気分」

両手に納めていたミルクティーを飲み干して、モエは年上の後輩に笑いかけた。
それは無邪気な、年相応の笑顔。

「でも負けないよ?」
「俺だって負けません」
「…シャークさん、」
「何ですか?」
「今後もよろしくね」
「…こちらこそ」

赤い専用くずかごにスチール缶を入れ、次の仕事があるから、と告げたモエはスタジオに向かって走って行く。
小さくなる背中に手を振りながら、シャークは小さく、誰にもわからないようにガッツポーズをした。

(炭酸飲料はC○レモン)


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