Are・you・opponent?
□屯所日記。 〜1日目〜
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「えーでは、これから一対一の練習試合を始めます!…って、土方さん!?良いんですかこの状況!?」
先日、謎の自称槍使い女が急に真選組で働きたいと言い、面白く思った俺が京華に練習試合を挑んだ。
「言い訳ねぇだろーが!あんの総悟、本気で働きたいと思ってんなら勝ってみせろ、って挑発しやがって…!!」
「………(汗)…あ!始め!!」
言うが否や、竹刀を持った二人が一斉に飛び出し、激しく竹同士がぶつかる音が道場に響く。
…正直、直ぐに終わると思っていた。
「ハッ、アンタ槍使いだって言ってた筈なんですがねィ?全然使い辛そうでも何でも無いじゃないですかィ!!」
速い。
横腹を狙うと見せかけて急に方向転換しても、そのフェイクにかからず防ぎ、横流しして直ぐに攻撃に繋げてくる。
「いんやァ?あまりにも使い辛過ぎて今にも竹刀を投げ飛ばしそうだ、よッ!!」
「うぉ!!?」
俺の素早さに着いて来る挙句、髪の辺りを横切ったその速さは周囲をも震わせた。
…叩き合って分かる。
斬り合い、喧嘩には慣れてる感じがした。
伊達に働きたいと言ってる訳じゃねぇ、コイツは。
確実に狙ってくる。
何者なんだよ…お前は……?
今度はフェイクでは無く、普通に頭を狙っても、スルリと避けて槍特有の突きを竹刀でやって来た。
…かと思っていたが。
「ネェ、考え事してるのって動きの遅さで分かる、って知ってた??」
「……ッ!?」
いつの間に迫って来ていた京華の竹刀が俺の手を狙い、勢い良く持っていた竹刀を弾き飛ばした。
右手が痺れて思う様に動かない。
「一本、だな……ってぅおッ!?」「何か飛んで来た!?」
弾き飛ばした竹刀は土方へと弧を描いて飛び、危うく土方はそれをかわす。
「避けないで下さいヨゥ、土方サン。折角狙ったのにー」
「避けるだろ普通は!?つーか狙うなよ!!?」
本当に狙ったかどうかは別にしても、頭の回転の速さも尋常じゃない。
「…アンタ、一体何者なんでィ」
まさか、女に負けるとは思わなかった(だから試合を申し込んだ訳だし)。
どうしても聞いておきたかった。
京華はニッコリと微笑み、一言だけ、こう言ったのだ。
「『ハルリンドウの花の精』」