記憶のネイロ
□貴方を見つけるプロローグ
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「ふぅ…空の青色が、綺麗だなぁ……って、当たり前かそんなもん」
窓に映る青空を見ながら小さな溜息を零す私、シオン。唯の平凡な少女(17歳)だ。
…な筈なのに。
「はあぁぁ…」
始まって早々捕まっております。
何でこうなったかって??
「さぁ、今日も仕事終わったし!帰ろ〜」
と思い帰る途中で、
「…く、来るなぁっ!」
「いてっ!!…な、何事!?て言うか変な人に押された!?」
誰かに追われているらしい男に押される。
「待て!」
「…ん?あれは……アート?」
その姿、髪色。
間違い無く私の知るアート。
アートとは幼馴染みの様なもので、ファクルタース学園以来会うのは初めてだった。
どうやらあの男はアートに追われているらしい。
「ひぃっ!来るな!!さもないと……」
急に腹に衝撃と、真上から声が聞こえる。
「(…はー、何で好きでも無い男に抱かれてんだか)」
「コイツがどうなるか、わ、分かってんのか!?」
いや、分かってないのは貴方でしょう…
「…く」
しかしアートも手出しは出来ない様で、拳銃を持ったまま(アートが警察をやっているのは知っている)動けずにいた。
「そのまま…そのまま、動くなよ!?」
そう言うと男は私を抱えたままこの薄暗い部屋まで走り、人質に私を軟禁した訳だ。
「はあぁぁ……あのー、其処の貴方」
「……」
「此処から出して貰っても良いですか?」
「良い訳無ぇだろうが!!」
「ですよねー…はあ」
詰まらない。
さて、この状況は脱獄(?)しても良いんだよね?
「…よいしょ」
簀巻きにされていたロープを腕の力《だけ》でブチ切り、ゆっくり立ち上がる。
体育座りのまま縛られていたせいか、足腰が痛い気がする。まあ良いけれど。
「…?な、何でお前……!?」
「すみません、余りにも足腰が痛かったもので。ああ、あと貴方のお名前は?」
「誰が言うか!!」
「其れは困りましたねぇ…」
楽しそうにクツクツと笑うと、当然男は面食らった様に後ずさりする。
「基本的な事はしておかないと…」
男が近くにあった鉄パイプを持つのと私が地面を蹴り出すのはほぼ同時の事だった。
「後悔しますよッ!!」
鉄パイプなんて御構い無しに部屋の端まで蹴り飛ばしてやる。
男は壁に身体を打ちつけると、血の混じった咳をして倒れた。
血の匂いは、私を狂わせる。
「……っ…」
慌てて鼻を塞ぎ座り込んだ。ドアを開ける気力すらない。
「(はぁ…お腹、空いたなぁ。肉、喰いたいなぁ……)」
頭の中で呟いて、倒れる男を横目で見る。
「…どうしたもんかな」