心なき狗と、名の無い死神と。
□貴方に告げるプロローグ。
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薄暗く闇に閉ざされた部屋……僕(やつがれ)の、部屋。
そのとある棚の上には、《あの頃》から長い間大切にしている写真立てを置いていた。
「……暗里」
そっ、とその写真に映る彼女の名を呼ぶ。
もう、会うことの叶わない最愛の人。
何があっても、彼女は必ず僕の隣に寄り添った。何時も僕の心配ばかりして、自身の心配を二の次にしようとする、可愛い僕の妹。
…僕の、愛しい妹。
僕が弱かったから、暗里を守る事が出来なかった。…否。
僕よりも心身共に強かった暗里に知らぬ内、頼ってしまっていたのかも知れない。
仕事に暇が有る時、写真を見る度《あの時》の記憶が蘇って吐き気が襲って来る。
それでも、写真に想いを馳せるしか無かった。
ー暗里、もしもあの時お前を止めていたら。何か変わっていたのだろうか……?ー