いつも、あなたを。

□ボクの嫌いな薬のハナシ。
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「はぁ……ゲホンっ」

「風邪か?不死のお前がか??」

田奈宮が脱走した明くる朝、帰りに降った土砂降りの所為か珍しく田奈宮が風邪を引いた。トムさんに電話をかけながら尋ねる。

「不死だけどさぁ…風邪だってひくし怪我だってしますぅ……死んだらリセットされるけど」

「じゃいっぺん死んどけ」

「痛いのヤダもん」

そう言うと、田奈宮は拗ね目を見せながらそのまま口元を布団に潜らせている。

半ば飽きれながら田奈宮の額に手を置くと少し熱い気がした。

「お前、熱あるぞ」

「ん……道理でダルいのかぁ…」

ボクじゃ分かんないけど、と田奈宮は手の甲を額に当てて唸った。

「薬あるから持ってくるな」

「薬……かぁ」

あからさまに表情が曇った。

「……あれか、お前苦いの嫌いな奴か」

「確かに苦いのは嫌いだけど、薬はそういうんじゃぁないの」

不貞腐れた田奈宮はポツリと、自身の過去を語り出した。

……コイツが風邪だと知ったときにトムさんに電話入れといて正解だったなと思う。



「……ボク、昔は布団から起きれない位病弱だったんだ。何も口に出来なかったしね。それを看病してくれてた人が居てさ、その人が医学に詳しかったの………」

不意に、田奈宮が口を閉ざす。

「田奈宮…?………っ」

布団を引っぺがすと、赤く火照った田奈宮の顔は哀しい様な、寂しい様な、色んな暗い表情が混ざり合って俺を絶句させた。

なんて顔、してんだよ。

「その人は…さ、色々ボクに手を尽くして…薬も色々飲んだし、注射も、手術も、とにかくその人は可能な限り試して……ボクは…」

一際、田奈宮の顔が大きく歪んで。まるで泣きそうで。

「…ボクは……こうして健康に、生きられてる…訳。きっと、感謝すべき何だろうなぁ…その人に、ありがとうって。だけどもう…」

「……ちょっと待て」

もし、そうだとするなら。
お前のその不死身はまさか…?

「はあぁ…駄目だなぁ。ボク、全然駄目だぁ……まさか久々に病気になったからって、こんなにベラベラ口を滑らすなんて」

田奈宮が俺の話を全く聞かずに口を動かし続けている。

「……何かあったら言えよ」

それだけ俺は田奈宮に告げて、静かに自室のドアを閉めた。

きっと思う事が色々あるんだろう。そう思って俺は、気が付けば田奈宮に気を遣っていた。

「……ここまで来ると俺はイカれてんのか?ったく…」

心が、騒ついて仕方が無い。
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