いつも、あなたを。

□誰にも言わないボクの事。
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「ッ…何で、此処にいんの?」
「酷いなぁ、まるでボクがこんな処に居ちゃいけないみたいじゃぁ無いか」
「……怪我は?」
「もう治ってるよ」

腕を捲って折原君に見せると、信じられ無いという様な顔でボクを凝視した。

「息なんてして無かったのに…」
「うん、ありゃ一回死んでるね。まっさか、自動販売機で死ねると思わなかったよ」

ふーやれやれ、と凛花が肩を竦めてみせる。

「君は…本当に人間?バケモノの間違いじゃないの??」

「確かに、人間とは言えないよねぇ!どうせ死ねないもん!!」

開き直った。

「この前救急車呼ぼうとして、しずちゃんと二人で空飛んでた時、まさかと思ったんだ」

「あ、やっぱりバレてた??」


「…君は、何者??」

途端、明らかに凛花の表情が一変する。
笑顔は変わらなくても、目は冷酷な蛇の様な目をしていた。

「何言ってるのサー。ボクは田奈宮凛花だよ?当たり前じゃぁ無いか」

「そんな事は聞いてない」

「じゃぁ自分で調べてみなよ」


「無いんだよ」


「…何が?」

分かってる癖に。きっとコイツは僕が何を言いたいのか分かっている。

「君に対する情報全て、に決まってるだろ。…名前以外、何一つ出てこないんだよ」

「あっはっは!そんな事ある訳無いでしょ。折原君。キミさ……
本気で調べて無いでしょ??」

「…どう言う事だ」

少しきつく言い放っても全く動じる事が無い。


直感で分かる。
コイツは僕と比べ物にならない程、こういう場面に慣れてる…

「あれ、其処まで分かっている癖に。まだ分かんないの?」

心を読む様にせせら笑うコイツに、無性に苛立ってしまう。
駄目だ。これじゃきっとコイツの思う壺だ。

「あれ、残念。タイムオーヴァーだね。じゃぁ特大ヒントって事で!」

無邪気に言っても分からない訳が無い。
コイツは人間じゃ、無い。

「だってキミ、調べて無いでしょ?《この時代の》情報全て以外、さぁ??」

ドクン、と心臓が波打つ。

「……まさか」


『死ねない』 『僕と比べ物にならない』 『人間じゃ無い』 『こういう場面に慣れてる』




『《この時代》の情報全て以外』


穴空きだらけのパズルが、全てはまる音がした。

「あーぁ、やっと分かった?
全く、ボクに此処まで言わせたのキミが初めてなんだからサ、もう少し《ココ》使いなよ〜」

とんとんっ、と自身のこめかみを叩く。

「…とんだバケモノだね」

「何とでも言いなよ。今更だしね」

「因みに、何歳?」

「其処までは教えてやんない。約二千年分、頑張って探すことだね。まぁ最も、そんな昔から生きてないケド」



「凛花ーーーッ!!!どこ行きやがった!?」

聞き慣れた声がする。
正体の知れてる、単細胞な男。
目の前に居る得体の知れない女よりは、よっぽど怖くも無い。

知らないと言うだけで、こんなにも違うモノなのか。

「さぁて、平和島君も探してる事だし、ボクはもう行くよ?じゃぁね〜★」

そう言うと凛花は、あの声のする方へと走り去って行って行く。
僕はその背中を見ながら、ポケットからプライベート用携帯を取り出し、開いてとあるメアドにカーソルを当てた。


「…波江?暇なら、急いで手伝って欲しい事があるんだけど……」
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