いつも、あなたを。

□だからこそ
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何回呼んだだろう。

覚えていなくても、ピクリ、と。確かに動いたのを感じたのはそう遅くはなかった。

「…ぅ……」
「…!田奈宮!?」
今まで息もしていなかったの様な息遣いで、それでもはっきりとオレを見るその目はいつも通りの黒い光を放つ田奈宮の笑った目だ。

「いっててて…」
「動かずに待ってろ。臨也は気に食わねぇが病院連絡しに行った」
「え…ソレ、本当?」
ガバッ、と起き上がりかけるのを慌てて制する。
「あの…平和島君」
「何だ?」
「急いでボクを連れて帰ってもらえない?病院沙汰には絶対になりたくないんだけど」
「はぁ?そんな身体でどうして…」


「良いから早くッ!!あ…」
驚いた。
そんな風に叫ぶ顔をするなんて。

「…分かった。一応聞くが、病院が嫌いとかじゃ無いんだよな?」
「…うん。急に叫んだらして、ごめん……」
「理由があるなら良い。しっかり捕まってろ」
今度は壊してしまわないように…
「うん」

しっかり、優しくと抱き抱えて大地を蹴る。
「た、高…てかなんでお姫様抱っこ!?////」
田奈宮が意識するとは思わなかった。急激にオレまで赤くなるのが分かる。
「他に上手い事出来ねぇんだよ!///」
「ひゃー、他の人たちまで見てるし!?」
「下なんか見るなよ!?」
「だってぇ!!」


一気にビルとビルを蹴り、目的地まで急ぐ。こんな場面見られて良い筈が無い。



「あれ、しずちゃん…?それにアレはまさか……」
だが、よりによって病院に向かう筈だった臨也に見られていたなど、分かる訳も無かった。
しかもそれが、ある火種になる事も知らずに。






「はぁ…つ、着いたぁ」
「大丈夫か?」
「もちろん」
家に着いてソファまで行こうとすると、自分で行けると言って聞かなかったので仕方なく降ろす。
「歩いて大丈夫なのか?」
「うん。と言うかもう傷は無いだろうし大丈夫だよ★それより平和島君ってば、流石だよねぇ!ホントに一撃で死ねると思わなかったよぅ♪」
「あ、あぁ………




…は?」
今、何て言った!?

「だけどやっぱり無理かぁ。ザンネン★」
「…今、何て言った?」
遅れてやっと言葉が出てくる。
「ん?やっぱり無理かぁ、ザンネン★って言ったケド?」
「そっちじゃねぇ。その前だ」
「えぇと、ホントに一撃で死ねちゃうと思わなかったよぅ♪の方?」
「あぁそっちだ。じゃなくて!!お前、今さらっと死ねるって言っただろ!?」
「うん」
「あっさり肯定するな!?何だよ!ソレ!!?」
「そのまんま。確かにさっきボクは死んだよ」
「悪ぃ、オレの耳がとうとう壊れたらしい」
「うん、多分壊れてないと思うよ」
「じゃあ、オレの目が幻覚見てるんだな。何故かユーレイが見える様になったらしい」
「違うから!ホントなんだってば!!」
「…!!」

今日は驚かされてばかりだ。
いつもなら冗談ばかり言って笑い飛ばす田奈宮が真剣な目をこちらに向けている。


「…悪かった。話、続けてくれ」
「……ボクも少し、焦っちゃったみたいだ。
ボクはね、ちょっと異常なんだ。普通死んじゃったらそれで終わり、ゲームオーバーでしょ?」
「…そりゃ、そうだろうが……」


「平和島君はかの有名なスーパーマリ○ブラザーズってやった事ある?」
「…一応な。クリア出来なくて、イラついてリモコン握り潰して、それ以来一回もやった事ねぇが」
「あはは(汗)…まぁ、ボクの人生なんてそんなもんだよ。《死》という事実は、ボクにとっちゃただのカウントにしか入らない。死んだって直ぐに生き返ってしまうのがボク。……まるで何回死んでも生き返るマリオみたい」

顔は笑っていても、目は少しも笑っていないのが分かった。

「だからさっき平和島君の投げた自動販売機で死んでもヘーキだったんだよ」
「そ、そうだったのか」
納得はできそうにないが。

「だからボクはずっと探してる」
「……死に場所を、か?」
「まぁ、基本何やってもムダなんだけどねぇ。この前の入水は平和島君たちに止められちゃったし」
「自殺なんてくだらねぇが、何かそう言われるとオレらが悪く思っちまうんだが?」
「あっはっは、勿論ボクが一方的に悪いけどねぇ★」

「それにここまで話したら、何と無く分かるんじゃない??」
「…何が?」
「ボクが病院沙汰になりたくない理由」
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