いつも、あなたを。

□いつの間にか大切に思う故に
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「…さて、どうしようか?」
着替えを済ませて部屋を出る。彼はもう出掛けてしまったので今はボクしかいない。

「…何かする事は無いかなぁ?と」
きょろきょろと辺りを見回した後、とりあえず家事全般を済ませてしまう事にした。




「ふぅ、終わり〜★」
洗濯物良し、掃除良し…朝ご飯はどうせボクしか食べないから要らないや★

「これだけやったケド、やっぱりやる事無いなぁ」
うーん、と少し迷ってからハイヒールに手を伸ばした。


「自殺の名所探しに行こ♪」



池袋の雑踏は色々な事が起きる。

例えば首無しライダーとか。
「あ!こんにちは〜★セルティさん♪」
真っ黒に染め上げられたバイクが向かって来る。
『こんにちは、凛花ちゃん』
口が無いのでPDAが口の代わりに素早く打たれた。
これでも仲は良い方だ。

「…そう言えば折原君見なかった?」
『いや、見てないよ?そもそも池袋が活動拠点じゃ無いでしょ』
「うーん、そうだよなぁ」
『また探してるの?自殺名所(汗)』
「それだけがボクの生き甲斐だからw」
『そ、そうなんだ』
あぁ、表情が分からなくてもきっと大丈夫かこの子!?とか思われてるんだろうなぁ…

『まあ大丈夫だとは思うけど、一応気を付けてね。ここ最近"ハリウッド"とかいう殺人鬼もいるみたいだし』
「あっはは!殺人鬼がわざわざボクの所に殺しに来てくれるならどんなに良い事か!!」
『…(汗)』


セルティと別れを告げ、また雑踏を歩き出した。
何と無く口が寂しかったのでポケットから棒付きの飴を一つ取り出して加える。
池袋はキライじゃぁない。
…スキでもないケド。
歩いていると色んな人たちに出会えた。例えば、
「あれ…田奈宮さん?」
「え?」
「おんやぁ、杏里ちゃんじゃぁないかい」
「ご無沙汰してます」
礼儀正しくお辞儀をする杏里ちゃん。まるで雛人形…げふんげふん。
「えぇっと…どちら様……?」
「こんにちは!ボクは田奈宮凛花。今日も自殺の名所探しに来たの〜」
「え、じ、自殺!?」
「相変わらずですね(汗)」
「杏里ちゃんは結構な変化があったみたいだねぇ」
クスクスと含み笑いをしてみせると、杏里ちゃんは困った風に悩ませながら、それでも何かしら思う所はあったらしい。
「いやぁ、若いって良いねぇ。青春真っ只中ってカンジ」
「それじゃまるでおばあさんですよ?」
「ちっちっち。人を見た目で判断しちゃぁいけないよ〜?」
「またそんな冗談を…」
「結構本気のつもりなんだけどなぁ」
「えぇと、竜ヶ峰帝です!よろしくお願いします…!!」
「竜ヶ峰君ね、よろしく★」


「そういや、紀田君は元気?」
そのボクの一言で、空気はガラリと変わってしまった。
二人は、あまり世の中に感心を持たないボクに今まで起きた事を教えてくれた。
「…へぇ、そんな事がねぇ。ま、いつか帰って来るでしょ!ここは池袋。どんな理由があろうが皆、最終的には此処に帰って来るんだからねぇ!」
「そう…ですね。そうですよね…!」
よっぽど紀田君の事が気がかりだったらしい。少し吹っ切れた顔をして二人は人ごみの中へ消えて行った。

そしてボクは見つけた。
「あ!やっと見つけたぁ!」
「…?何だ、凛花ちゃんか」
「こんにちは、折原君♪良い自殺名所無い?」
「本当に好きだよね、そういうの」
「ははは、だから冗談じゃないんだけどなぁ」
「一番無難なのはやっぱりビルの屋上から飛び降りるの、かな」
「痛そうだから良いや★」
「…本当に掴めない子だね」
「情報屋で名高いキミでも、ボクの性格は掴めないかい?」
「ははははっ!痛い所つくなぁ」
「そうかい?…まぁ、どちらにせよ普通に首を締めるのが無難かなぁ」
「じゃぁ最期くらい看取ってあげるよ」
「いつからボクは死にかけの病人になっちゃったのサ」



そんな他愛も無い世間話も、ある一人が現れると途端に大波乱で。

「いいぃぃ ざああぁ"ぁ やああぁぁあ!!!テメエ何度も言ったよなぁ!!?」
「分かってるよ、どうせ新宿に帰れ、二度と来るな、でしょ。耳にタコできちゃうよ」
「んなもん知るかぁ!」

目の前を標識がものすごいスピードで通る。
「うわぁーお」
コレが噂の標識投げ。
初めて見たけど、それでも何と無く普段以上に彼の怒りが募っているのは気のせいなのか。


「あれ、しずちゃん、いつも以上に、怒ってない…!?うわっ」
折原君も気付いたらしい。
息を切らしながら辛うじて避けている。

「…マズイかなぁ?」
このままだと本気で彼は折原君を殺しかねないだろう。
そう思ったボクは…
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