いつも、あなたを。

□いつの間にか大切に思う故に
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田奈宮と暮らし始めてから、約三週間たったある日。




オレが朝、ソファから起きて部屋を覗くと、田奈宮はまだ寝ていた。
うつ伏せに寝るのが苦しいらしく、顔は横を向いていて、規則的な寝息をたてている。

「仕事があるんだよな…置いていくか」
音をたてないように慎重に閉じたが、逆にドアノブを捻り曲げてしまった。


メキッ
「…ぅ?」
(やべ…起きちまった)
「んー…おはよぅ、平和島君」
「あ、あぁ」

大きく伸びをして起きる田奈宮のクリーム色の髪がふわりとなびく。
「…田奈宮も髪染めてんのか?」
「え?まさか!自殺する人には髪染めなんて要らないんだよぅ!」
「地毛なのかよ…外国人じゃないだろうし…」
「…あぁ、その事」
一瞬、田奈宮の表情が曇った気がした。

「何か、悪い事聞いちまったか…?」
「あぁいや、気にしてないよ?元々ボクは色素薄いから、こんな色してるんだ」
「珍しい色してるんだな」
「触ってみる?」
「は…?」
「珍しいかどうかなんて分かんないけど、どうぞ?」
「…お、おぅ」

恐る恐る腕を伸ばすとさらり、と髪が滑り落ちる。
ストレート、とまではいかないんだろうが、それでも髪に指を通すと絡み無く毛先まで通しきる事が出来た。

「これでも自慢の髪なんだぁ」
すごく嬉しそうに、はにかむその顔に何故か胸苦しさを覚える。

「…あ、やべ」
「何が?」
「仕事あるんだった」
「あぁ、田中君だっけ?」
「急がねぇと」
「んじゃぁボクもぶらついて来ようかなぁ」
「…また自殺とか言うんじゃねぇだろうな?」
「気分によるかなぁ♪」
「…動けない様に骨折させてやろうか?」
「ごめんないウソです真っ赤なウソですホントにごめんなさい」
「分かりゃ良い」
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