いつも、あなたを。

□ボクの嫌いな薬のハナシ。
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________「………凛花や。可愛い私の姫君や。どうかその綺麗な瞳を私に見せておくれ。なぁに、きっと大丈夫。凛花の病気は絶対に治るよ。この私が治すからね、心配は要らないよ。今日はこの薬を持ってきたんだ」

「………っ」

嗚呼、貴方は今日も、

涼しい昼下がりの、
真っ白な病室で笑いながら、
色々な薬や注射を持ってきて、
順々に試していくのか。

その貴方の掌で不気味に光る赤黒い液体の入った小瓶は何の薬なのだろうか。

「さぁ、お飲み。」

促されてゆっくりと喉を伝うその液体は、私の身体を駆け巡って…

「…っ!!?っは……はっ……ぅあ…!??はぁっ……はぁっ…!!!」

私の身体を蝕む。
私が壊れる、音がする。

苦しい。何かがオカシクなる。
世界がぐるぐる回る。気分が悪い。

「あぁ、やっぱりこの薬は効いたんだね!こんなにも凛花が元気になってくれるなんて!!そんなに嬉しいからって私の着物を力強く握り締めてはいけないよ。シワだらけになってしまう」

違う。嬉しくない。

「……っ、くる……し…っ」

「喋れるのかい!?嗚呼!良かった!少しでも元気になれたらと思って持って来た甲斐があったよ。明日も持って来よう!後は……昨日も試したこの注射、好きだろう?」

「〜〜〜っ!!?」

今度は注射。唯の注射なんかでは無い。
だって私は知っているから。
その中で波打つその薬液は……

「………っ!?」

「昨日も言ったかな。この薬はね、細胞を強制的に活発化させて身体を強靭にし、時代の中では不死の薬だなんて言われたそうでね……」

知っている。

鼓動が、脈拍が、あり得ない位に速まって、それが大きな負担となって苦しめる。

辛い。息が出来なくなる。

「……っは……っは…!!」

「これで凛花も今日は安泰だよ。また明日も来るからね、それじゃぁ」

そうやって貴方は嗤いながら部屋を去って行く。


そんなにも貴方は私を愛している筈だろうに。
貴方は何処で、それが歪んでしまったのだろう。

止まぬ息切れに肩を揺らしながら、朦朧とする頭でどうにか視線と思考を巡らす事しか私には出来なくて。
私は貴方を止める事が出来ない。

それが堪らなく嫌で、
私は私を呪った。

「………ぁ………っ」

言葉に出来ない。

せめて、この声が声になるのなら。

私は貴方を止められるのかも知れないのに。





『私なんて、死んでしまえば良いのに………』__________
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