いろのゆめ。

□ジン・カルマ誕生日SS
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2月14日。
トワイライトレクイエムに存在する古城にて、カルマは保護者2名と2匹に誕生日を祝われていた。

「誕生日おめでとう、カルマ。これは私とファルケからのプレゼントよ」
「これはナイトからです」
「こっちはオイラとナゴからっス!」
「……あり、がとう……開けても、いい……?」
「ええ、どうぞ」

ローザの言葉を受けて、リボンをほどき、包装してある紙を丁寧に取っていく。
蓋を開けて見ると、ローザから受け取った箱には両手に収まるサイズの小さな木箱、ファルケから受け取った箱にはスノードーム、ギィから受け取った箱には片手で収まるサイズの白い箱が入っていた。

「……ロズ、これって……?」
「その木箱はオルゴールよ。ギィが渡したのはプリザーブドフラワー。中に入っているのは青薔薇よ。貴方、好きだったでしょう?」
「………うん……嬉しい、ありがとう……」

ふわりと微笑んでカルマは礼を言った。

「………それにしても」

ファルケが顎に手を当て、思い返すように言った。

「遅いですね、ナイト……彼の様子だと、もう少し早く帰ってくると思ったのですが」

そう。
本来ならナイトもこの場にいるはずだった。
だが、直前になって急に「用事を思い出した」と言って城を出たのだ。

「………あら、噂をすればなんとやら、ね……戻ってきたみたいよ」

くすり、と笑ってローザが窓を見た。
その言葉と同時に窓がひとりでに開き、何かを抱えたナイトが飛び込んできた。

「悪い、少し手間取っちまった」
「………ナイ、ト……なに、抱えてるの……?」

きょとん、と首を傾げるカルマ。
ナイトはすっと抱えていたものを差し出した。

「………え?」

カルマは驚いたように目を見開いた。

「………ど……して……?」
「………会いたくなったんだ。だから、連れてきてもらった」

ナイトが連れてきたのは、カルマの恋人であるジン=キサラギだった。
彼は今、修行の為カルマと離れて旅をしているはずだった。
なのに……何故、ここにいるのだろうか。

「今日がカルマの誕生日だってナイトから聞いたんだ」

だから、どうしても会いたくなった。
そう微笑んで優しくカルマの髪を撫でるジン。

「………でも……今日、ジンも……」

カルマが言うように、今日は彼だけでなく、ジンの生まれた日でもあった。
けれど、会うことはできないだろうと思って何も用意できなかったのだ。

「……ごめん、なさい……何も、用意……できて、なくて……」

悲しげに俯くカルマを、ジンはそっと抱き締める。

「……何もなくても、今日カルマと会えたことが……僕にとって、一番のプレゼントだよ」

チャリ、と首の後ろから音が聞こえた。
不思議に思い、ジンが離れたのを確認して、自身を見下ろした。

「………ぁ、」

目に入ったのはキラキラと輝く雪の結晶。
そのまわりには青い薔薇と青い石が飾られていた。

「これ……」
「僕からのプレゼント」

本当は指輪にしようと思ったんだけど、と話すジン。

「全部、終わったら。………僕と、一緒に来てほしい」
「それ、って……」
「………その時に、指輪渡すから。……だから、今は」

ジンが言い切る前に、カルマは抱きついていた。

「………待ってる、から」
「うん」
「………ずっと、待ってる……から、」
「………うん」
「………だから、」

───"帰ってきて"。

今にも泣き出しそうな、そんな切なげな声音で、カルマは言った。

「………大丈夫。ちゃんと、"ここ"に帰ってくるから」

今まで何も望むことのなかった彼の、初めての願い。
その願いを叶えたくて、その約束を守ってあげたくて、ジンはもう一度、優しく彼を抱き締めた。


全てが、終わったら。

今度こそ、一緒にいよう。


やがて訪れる戦いに思いを馳せながら、ジンはそう心に誓った。



End


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