運命を覆すダイス

□第1章:非日常への誘い
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ルドガーは海停にいた。

夜が明けていない人気のない場所で、双剣を駆使してある人物と戦っていた。


『必要なのは己のすべてをかけた選択だ!』

『お前にできるのか? 選択が? 破壊が?』


その人物は、兄のユリウス…に似ているが、全体が影を帯びているどこか異質な者。

ルドガーは必死に応戦するが、ドンドンその影に押されていく。


  キンッ、バシッ


持っていた双剣が吹き飛ばされ、無防備になったルドガー。

容赦なく、影は強烈な剣撃を浴びせた。


『答えろ…ルドガー・ウィル・クルスニク!』

「うぁあああああ!」


◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇


ルドガーは、ベッドから上半身をガバッと起こした。


(また…あの夢か)


一年前から、同じ夢を繰り返し見ている。

初めは疲れからくるものだと思っていたが、徐々に回数が増えていった。

同じ場所で、同じ兄らしき人物と刃を交えて…追い詰められていく。

何かの予兆だろうか…今のところ、それが現実になっていないのが幸いである。

しかし、こう何度も気分が滅入る夢が続くと、目覚めも悪くなる。


「…って、もうこんな時間か!」


目覚まし時計が、午前6時半を表示している。

朝食を作らないと…!

ルドガーは、部屋着を脱ぐと急いで身支度をし始めた。


(それに…今日は初出勤の日だし、寝坊して遅れたら洒落にならないじゃないか)


クランスピア社の試験を落ちてから約一年。

100以上の企業に履歴書を送って、ようやく採用された駅の食堂だ。

料理の腕には自信がある。

幼い頃から、忙しい兄に代わり家事全般をしてきたのだ。

鏡を前に、キュッとネクタイを締める。


「…よし、気合入れないとな」


軽く頬を両手で叩くと、ルドガーはキッチンへ向かった。




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