忍の恋

□寒い日に
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11月末の夕暮れ時。
頬を刺すような冷たさの風が俺の横を通り過ぎ、さみぃ…と小さく愚痴を零す。
隣から、「そうだな」と声がして振り向くと、鼻を真っ赤にしたアンタがいた。

「砂では、ここまで冷える日は珍しいが…
木の葉では当たり前なのか?」
「あぁ…、最近では結構寒い日が続いてるな」
「そうか…」

砂の使徒として、木の葉に来ているテマリにとっては慣れない寒さなのだろう。
「今回はどのくらいの期間、木の葉にいるんだ?」
「ん?何だ?火影様から聞いていないのか?」
「あー…、忘れた」
俺の言葉を聞いたテマリは呆れた顔で続けた、
「お前…、私だから良いものの、案内役としてそれでいいのか?」
「へいへい、スミマセンねー」
使徒がアンタじゃなきゃ、こんなメンドーな事する訳ないのに。
なんて言える訳もなく、ただ流すだけだった。

「あー…あの、さ、
手、繋ぎませんか…?」
「…は?」
「あっ、いや、手繋げば少しは暖けぇかなーと…
…嫌ならいいけど」
言った後に恥ずかしさが込みあげて来た。
それに気付いた様で、テマリがくすっと笑う。
「お前、素直に『手繋ぎたい』と言ったらどうだ?」
「…うるせぇーっすよ」
「まぁいい、繋いでやるよ」
テマリが俺の手を掴んで歩き出す。
俺の手もかなり冷たいが、テマリの手の冷たさはそれ以上だった。
「手、冷たいっすね」
「お前もな
少しは暖かいかも、と期待していたのに」
「…そっすか、スミマセン
嫌なら、手離しますか?」
名残惜しいが、テマリが嫌なら仕方が無いと思い手を離そうとしたら、テマリが俺の手を強く握ってきた。
「…別に、嫌だとは言ってないだろ」
そう言うテマリの顔は見えなかったけど、耳まで真っ赤な様子を見れば一目瞭然だった。

(まったく…、素直じゃないのはどっちだよ)
「じゃあ、手繋ぎましょうか」
俺はそう言うと、テマリの手を強く握り返した。

冷たい風が二人の横を通り過ぎて行く。
少し、寒い日も悪くないと思った。
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