散り始める花
□病
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最近、気に食わない新入隊員がいる。
僕との試合で勝ったうえに近藤さんに気に入られたんだ。僕がイライラするのは当たり前だろう。
前に、そのイライラを発散するべく千鶴ちゃんの元へ行くと、そこにはすでにアイツがさも自分の場所ですよと言わんばかりにいるのだ。
それを見たときの僕の苛立ちは半端なものではなかった。
だいたい、あんな女みたいなか細い体をしておいて、どこに力があるというのさ。
最近では平助君とか左之さんとかが親しくしているようだけど、僕は絶対になびかない。
あー、ほんとイライラする。
ふと、視界に洗濯物を干している彼女が目に入った。
さてと、憂さ晴らしに行こうかな。
僕は重たい腰を上げた。
沖田「…ちーづるちゃん!!」
千鶴「きゃあ!!!」
僕の声に驚きの声をあげた千鶴ちゃん。
思った通りの反応をしてくれた彼女にさっきまでの苛立ちは少し無くなった。
沖田「あの金髪野郎、今日はいないんだね」
千鶴「金髪野郎…?桐生さんならお部屋でお休みになっていますよ。なんでも体調が悪いとか…」
沖田「…へえ……」
心配そうに話す千鶴ちゃんにたいし、僕は素っ気なく返す。
体調が悪い?あいつが?
あははっいいこと聞いたかも。
僕は「あっでも、部屋には誰も近づかせないようにって言われましたんですけど!?」という彼女の言葉を思いっきり無視して、奴の部屋へと足を運んだ。
彼の部屋は僕の部屋とは離れていて、幹部の僕に勝ったことを口実に一人部屋である。本当は羅刹のことを知っている重要参考人だからなのだが。
よし、まずは襖を思いっきり開けて奴の腹に突撃しよう。そして驚きと苦しみに満ちた表情をしかとこの目に焼きつけておこう。
『…ぐっ……ぐぁ…はあ…はあ…』
と、彼の部屋から彼の声と思われるものが聞こえてきた。
…苦しんでる?
何かに耐えるような、聞いていてとても不愉快になるような声だ。
これは…どうすればいいの。
でもやっぱり面倒ごとは嫌だし、このまま立ち去ろうかな。
と、踵を返した瞬間。
『…はあっ…誰…だいっ?』
襖の向こう側から聞こえてきた声に思わずため息を吐きたくなった。
それもそうか、別に気配を消して来た訳でもないのだから気付かれて当然だろう。
『と、りあえず…今日のところはっ勘弁してくれないかなっ!…僕もちょっと今…無理だと…がはッ!!!』
切羽詰まった彼の声に本当に大丈夫か、こいつみたいな思いが込み上げてきた。
普段は自分でも思うほど非情なのだが、これほどまでに苦しんでいる奴を目の前で見捨てるという行為をするのは抵抗がある。
まあ、彼も一応近藤さんが認める新選組隊員なのだから。
僕は彼–––––桐生千遥の部屋の襖に手をかけた。
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