散り始める花

□遊
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道場での稽古を終えた俺は庭で絶賛日光浴中だった。そう…『だった』のだ。

…何故『だった』なのかというと、たった今新ぱっつあんと左之さんに拉致されたからである。




藤堂「お、おい!どこいくんだよ!!」


永倉「どこって…んなの島原に決まってんだろ!」


原田「言っとくが俺も連れてこられただけだからな」


藤堂「そういう左之さんも結構のり気だよな…。こんな昼真っから酒なんてよぉ…知らねえぞ、土方さんやら源さんやらになんか言われても…」


原田「大丈夫。お前も共犯だ」




それ、全然大丈夫じゃねえよ!と叫ばずにはいられなかった。


まあ本音を言うと俺も暇だったので、行きたくない訳ではないのだ。最近は変な隊士が入ったし、色々溜まっている。


ちょうどいい、この機会にぱーっとしちまうかあっ!





ふと視界に金色が入る。俺は何も考えずにその金色の元を見た。



『おや?…君たちも今から島原にいくのかい?』



そこには最近見た顔があった。


とても美しく、誰もが振り向くとはまさにこのことだなと思うくらいの男だ。


でも何故?


永倉「『も』っつーことはお前も島原に?」


『うん、ちょっと野暮用があってね』


原田「その野暮用ってなんなんだ?」


『さあ?…ところで君たちも行くのなら一緒に行かないかい?僕も君たちといた方が楽しめそうだし』



左之さんの問いかけを『さあ?』の一言で流した桐生は人が良さそうな笑顔で近づいてきた。


…それは願い下げだ。やめてほしい。なんのための気晴らしだと思っているんだ。お前のせいだぞ、お前の!


永倉「おうよ!酒のお共は多い方がいいっていうしな!」


原田「…それどこから聞いてきたんだよ。まあ、俺はどっちでもいいんだけどな」


『ああ、そういってもらえて安心したよ』



で、藤堂君は?とでも言いたげな顔でこちらを向いてきた。



藤堂「…いいよ、別に」




そう言った俺の顔はとてもふてくされていたと思う。






































原田「おーい、桐生。酒はまだあるかぁ?」


『まだまだあるよ。つごうか?』


永倉「あ、俺のも頼むぜ」


『はいはい。ほどほどにしときなよ』



藤堂「……」




さっきから随分たっただろう。



ベロンベロンの新ぱっつぁんと左之さんに何故かこの空気に馴染んでいる桐生。


この構図にツッコミを入れられるほど俺のツッコミ度は高くない。



始めは一応警戒していた新ぱっつぁんと左之さんだったが、だんだんと桐生に解かせれていき、もう今ではお馴染みの桐生と言えるくらいになっている。




どうしてだ。どうしてこうなった。





俺は桐生に上手いことされる新ぱっつぁんや左之さんとは違う。絶対に流されねえぞ。


そう心に決めた俺は酒の甘い香りに緩まっていた顔をキュッと締めた。




『どうしたの、藤堂君。お酒飲まないのかい?』


藤堂「あ、俺はもう…」



『いいじゃないか。今日はぱーっとするつもりだったんだろう?どこかの新入隊士のこともあって疲れているんだよね』


藤堂「お前っ…それ」



『原田君がさっき愚痴をこぼしていたよ。“最近平助の付き合いが悪い。どうせお前のことで心底疲れてるに違えねえ"ってね』



藤堂「……あっそ」



…左之さん…酔った勢いだとしても本人の目の前で言うか、普通。



なにもかも嫌になった俺は桐生に酒をつがせ、一気に飲んだ。



『わあ、いい飲みっぷり』


藤堂「…それほどでもねえよ」



酔いが回ってくる脳は褒められると鼻が高くなるらしく、俺もいい気分で少し口角をあげた。





やはり俺も流されてしまったようだ。









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