暮れなずむ空であなたと

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平日の昼下がり。
足は自然と、ある喫茶店に向かう。かの有名な毛利探偵事務所の真下にある「喫茶店ポアロ」

人々にとってそこは、ただの喫茶店にすぎないかもしれないが、私にとって、そこは、大切な仕事場


といっても、ここで働いているという意味ではないのだけど

「いらっしゃいませー!」

来客を知らせるベルとともに、巷で有名のイケメン店員が爽やかに挨拶をする

『こんにちは!安室さん!』

「いらっしゃい、飾利さん」

彼のベビーフェイス破壊力抜群スマイルに今まで何人の女性が落とされてきたのだろうか。といっても、私は大丈夫。彼のこの偽物のスマイルにやられたりしない。

『今日は客足が少ないんですね』

「平日のランチ時を過ぎてますから。いつものでいいですか?」

『お願いします』

いつものようにカウンター席に座って、辺りを見渡す。

『安室さん。私、今日は1人です』

いつもの合言葉をかける。
厨房からは、彼の声は聞こえない。これは今日も監視されているかな、と思っていたら、彼がミルクティーを持って戻ってきた。

「…奇遇ですね。僕も今日は1人です」

ニヤリと笑う彼は、もう安室透ではなかった。

『…お疲れ様です。降谷さん』

我らが警察庁のエリートであり鬼上司。降谷零の顔になっていた。

「連絡は取り合ってたが、こうして会うのは久しぶりだな」

『そうですね……盗聴器仕掛けられているときは、会うこともできませんし』

「ジンが僕と飾利にバディを組ませないからな」

『あ、でもベルモットからあなたの話はよく聞きますよ』

「やめてくれ…仕事でやってるだけだから…」

降谷さんは珍しく照れる様子で目を伏せる。これはチャンス。降谷さんを揺さぶるチャンス!!

『ハニートラップでターゲットを次々に喰ってるらしいですね、バーボン』

ついつい楽しくていじってしまう、が……。ごめんなさい。そんな殺気バリバリの目でこっちを見ないでください……。

『すみません、冗談です。冗談ですから。あなたのおかげで日本も安泰…』

「飾利……絶対他の部下にそのこと言うなよ」

『わかってますって!上司の面目丸潰れですからねぇ』

今日のミルクティーは少し甘い。
きっと、疲れている私を労って甘くしてくれたのだろう。
こういうとこがモテるんだろうなぁ

「……元気か?」

『はっ?何ですかその質問。降谷さん、おじさんくさい……』

「お前の目が死んでるから心配してるんだろ……」

降谷さん曰く、私の目は死んでるらしい。
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