暮れなずむ空であなたと

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遠い遠い昔の記憶。
当時の私は、ふわふわの茶髪をツインテールにして、これまたふわふわのスカートをはいて、いつもテディベアを持っているような、絵に描いたような女の子だった。


『れーいくんっ!あそぼ!』

私はいつものように、近所に住む零くんを呼びに公園に来ていた。

ちょうど、しゃがみ込んでいた彼の背中に話しかけたのだが、彼から返事はなかった。

『零くん…?』

心配になって彼を覗き込んで、驚いた。普段、泣かない零くんが顔をぐしゃぐしゃにして泣いていたのだ。

『零くん!どうしたの?どこか痛いの?!それなら、先生のところに…』

「ダメ……いないんだ…いないんだよ…エレーナ先生……」

『え……?』

幼い私は瞬時に理解した。
私たちの町医者…エレーナ先生のことを零くんは大好きなわけなのだが……そのエレーナ先生が、いないのだろう。

『…お出かけ?』

「違う…いなくなっちゃったんだよ」

『家にもいないの?』

「うん……遠くに行っちゃうって……行ってたんだ…」

そう言うと、零くんはもっと声を出して泣きはじめた。
幼い私には、何もできなかった。

零くんが、エレーナ先生に淡い恋心を抱いていたのは知っている。
私だって、優しいエレーナ先生が大好きだ。

『…お引っ越し?』

「わからない…」

『もう会えないの?』

「会えないって…」

涙わ止めない零くんを見て、私は必死に何かを考えた。
どうしたら、零の涙を止めることができるのか。
どうしたら、彼を笑顔にできるのか。



私は

エレーナ先生じゃないけど

『零くん…泣かないで……』

「うぅ…先生…」

そっと、そして、強く。
彼の手を握る。

『…私はずっと、零くんの隣にいる!』

すると、ようやく彼は私の方を見てくれた。水色の大きな瞳が濡れていた。

「ずっと…いてくれるの?」

『うん!ずっと!絶対!』

「いなくならない?」

『ずっといる!エレーナ先生が帰ってくるまで、私が代わりに零くんを守るから!』


お願いよ。どうか泣き止んで。
そんな想いと一緒に、私は強く強く彼の手を握る。


これが
私と彼の最初の約束。
私と彼の物語。
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