立海

□キングと神の子
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跡部が部屋を出ていってしまうと同時に現実が幸村を孤独にさせた。

「跡部!」

『アーン?』

すぐにコールに出た跡部の優しさが伝わる。

「電話、出てくれたんだね」

『神の子からの思し召しなら受けとるぜ』

「俺、神の子なんかじゃないよ」

『利用したっていいンじゃねぇの』

スマホを握りしめて、昨日からほっぽったままの立海ジャージを羽織って部屋を飛び出す。

「跡部!」

そこに佇む背中に思いきって呼びかけた。

「ありがとう!俺、跡部が…!」

『ちっ、目立ってしょうがねぇだろ』

パジャマにジャージを羽織って裸足のまま駆け出したから、近所の人目を引きかねない。
ずかずかと向かってきた跡部に首の後ろから腕を回されて、バランスを崩しながら思わず笑った。

「目立つの好きだろう?」

「俺様ひとりで十分だ。それで、覚悟は決めたかよ」

「覚悟じゃない。本望だ」

「その口から聞かせてもらうぜ」

「好きだよ跡部」

跡部が立海ジャージでふたりの頭をすっぽり覆ってくれる。

「君とならまだ誰も知らない俺自身に出会えそうだ」

「願ってもない選択だな。感謝してるぜ、幸村」

重ねた唇は思っていたより乾燥していて、ジャージの埃っぽい匂いは昨日の出来事を遠い記憶にさせた。
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