ギャグ小説の段

□兵庫水軍怖い話大会
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蜉蝣「じゃあ、まず俺から」
兵庫第三協栄丸「お!言い出しっぺが最初かぁ」
蜉蝣「はい。…これは俺たちが出会った濡れ女子の話…」
東南風「ぬ…濡れ女子…?」
蜉蝣「そうだ。まずは濡れ女子って知ってるか?」
網問「名前は聞いたことありますが、どんな妖怪かは…」
蜉蝣「そうか。…濡れ女子は、海から這い上がってきたびしょびしょの髪や着物を纏った若く美しい女の妖怪だ」
航「若く…」
間切「美しい…?」
蜉蝣「そうだ。しかし気をつけろ」
疾・間・航・網・東「「「「「?」」」」」
蜉蝣「濡れ女子と目を合わすと、向こうからにこりと微笑みかけてくる」
舳丸「……」
蜉蝣「それに微笑み返したら最後だ」
網問「さ、最後…?」

蜉蝣は一拍呼吸を置き、

蜉蝣「一生濡れ女子に付きまとわれるのさ!」

わざと語尾を強めに、驚かすように言った。

間・航・網・東「「「「ひえ〜〜!!」」」」
疾風「いーやーだぁぁーー!!!」
鬼蜘蛛丸「疾風さん、う、煩いですっ…!」
間切「あ、兄貴たちはその濡れ女子に出会ったんですか!?」
蜉蝣「あぁ、そうだ。先日お前たちが荷の運搬に行った時、それは突然俺たちの前に現れた」
航「そ、それは、どんな…?」
蜉蝣「あの日…、俺たちは出航したお前たちを手を振り見送った。そしてその直後、海からざばり、と誰かが上がってきた音がした…」
網問「“誰か”…?」
東南風「それは、海で泳いでた人ではなく…?」
蜉蝣「俺たちも最初はそう思ったが、…次の瞬間っ!!」
疾・間・航・網・東「「「「「っ!!?」」」」」
蜉蝣「海から這い上がってきた濡れ女子が俺たちの前に現れたんだ!」
間・航・網・東「「「「ひぇーー!」」」」
疾風「ぎゃーーー!!」
鬼蜘蛛丸「鼓膜が…!」
航「そ、それで、ど、ど、ど、どうしたんですか?」
蜉蝣「…俺たちは、濡れ女子にとり憑かれないように注意を払いながらも、ただ逃げるしかできなかった…」
間切「兄貴たちでさえ逃げるしかできなかったって…!」
網問「……それじゃあ、濡れ女子は…?」
蜉蝣「……」

そこで蜉蝣はピタリと口を噤んでしまった。

疾・間・航・網・東「「「「「?」」」」」
蜉蝣「……お前たちには見えないのか…?」
網問「え…?」
蜉蝣「ほら…俺たちの後ろに…」
東南風「!?」
蜉蝣「俺たちに一生付きまとう、濡れ女子の姿が…」
疾・間・航・網・東「「「「「っ!!?」」」」」

―ザバリッ
その時、海の中から何かが這い上がってくる音が響いた。

間切「ひぃっ!」
疾風「こ、こ、この音って…?」

―ズ……ベチャ……

東南風「ま、さか…?」
航「嘘嘘嘘嘘!!」

―ズ…ズ……

航「う、そ…でしょ!?」
網問「蜉蝣の兄貴ぃっ!!」
蜉蝣「……」
網問「なんとか言って下さいよー!」
間切「義兄助けてっ!!」
義丸「…若く美しい女子…微笑み返したら一生つきまとわれるんだ…。お前らも気をつけろ……」
間切「義兄っ!?」

―ズ…ベチャ……
そしてその音は船の欄干のすぐ裏まで近づき、水に濡れた手が下からにゅっと現れた。

濡れ女子「あ゛ーう゛ー」
疾・間・航・網・東「「「「「「……っ!!?ぅわぁぁーー!!!!」」」」」」
航「舳兄!た、助けてっ!」
舳丸「……」
網問「来るっ!来るー!」

―ズ…ズ…
濡れ女子「あ゛ーう゛ー」
疾・間・航・網・東「「「「「わぁぁーー!!!」」」」」



 
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