ギャグ小説の段

□告白大作戦
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 「ったく、あれくらいで気絶すんなって」
 「すまん…」
 廊下を歩く潮江と食満と、未だ治まらない潮江の鼻血を拭き取りながら後をついて行く伊作。
 「とにかく、鼻血が治まるまで休憩だ」
 潮江の部屋の障子を開けると、
 「遅かったではないか」
 すぐに仙蔵の声が響いた。
 そして部屋の中には仙蔵の他に茶をすするもう一人の姿…。
 「あ、兵庫水軍の義丸さん!」
 「やぁ」
 義丸は片手を軽く上げ挨拶をする。
 「なぜ義丸さんがここに?」
 「お頭の使いで、今日捕れた魚を食堂のおばちゃんに届けに来たんだ」
 「お帰りになろうとしていたところを私が見つけて、こうして時間をいただいたんだ」
 仙蔵が、どうだとばかりに口端を上げた。
 「そうか!女遊びの激しい義丸さんなら、落とすテクニックなんていくつも知ってるってことか!」
 「“激しい”、なんて心外だなぁ、食満くん?俺はただ彼女たちとなかよくしてるだけだぜ?それより話は聞いたぜ、潮江くん。団子屋の娘さんにほの字なんだってな!?」
 「は、はい!」
 「いいじゃないか、青春だねぇ。俺にもあったなぁ、店の看板娘に妙にドキドキしてた時代」
 「えっ!?義丸さんにもそんな時代があったんですか!?」
 「んー…、あったと言えばあったし、無かったと言えば無いかなぁ…?」
 「え……どっち?」
 「まぁ、正確に言えばないんだけどね」
 「ないのかよっ!」
 「俺は女の人と見れば声かけちゃう方だから、ドキドキして声かけられないって感覚は無いかなぁ。でもさ、その甘酸っぱさ最高じゃあないの!男ならガツンと行ってこい!」
 義丸は方目をつむり右手の親指だけを、ぐっと立ててみせる。
 そんな義丸の姿を白い眼をして見つめる食満。
 ――いちいち古臭いな、この人…――

 「でも、俺告白なんてどうしていいか分からないんです…」
 「俺をさ、その娘だと思って告白してみなよ?」
 潮江が俯くと義丸が自身の胸をドンと叩いた。
 「え…!?」
 「ほら、早く」
 「え、でも…そんな急にっ、何言っていいか…」
 「告白は勢いだ!ヘイカモン!」
 「…す、す、す、好きです!」
 「おっ、いきなり本題かぁ。いいねぇ、その調子」
 「わ、私と…、お、おつ…おつき……き…ギンギーン!!」
 「どわっ!!?どうしたいきなり!?」
 「…いやぁ、緊張したらつい口癖が…」
 ――なにこの子…、こんな口癖あるの…?――
 「ま、まぁいいんじゃないかな?回りくどい言い方より、直球で勝負する方が潮江くんらしいよ」
 「そうですか!?よかった!義丸さんにそう言ってもらえると、なんだか大丈夫な気がしてきました!ギンギンに漢を出してきます!」
 「う、うん…。でもさ…」
 「よっしゃー!やるぞーー!ギンギーン!!」
 「女の子の前でその、ギンギンて口癖はやめた方がいいと思うよ…?」
 「ギンギーーン!!!」
 「おーい、聞こえてる…?」


 
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