ギャグ小説の段
□告白大作戦
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「そーゆーわけで!文次郎!お前はあの娘に告白するんだ!」
忍術学園に戻ってきた潮江を早速捕まえて、食満はビシリと言ってのけた。
「はぁ?なにが“そーゆーわけ”だっ!?いきなり言われても話が見えてこないぞ!」
「だからぁ、お前が告白しなきゃ困る人がいるんだよ!」
「はぁ?…て、なんでお前があの娘のこと知ってるんだよ?」
「俺は千里眼だからな!」
「嘘つけ!この間の、隠しておいたまんじゅうを食った犯人まだ見つけてないくせに!」
「うるせー!つべこべ言わずに告白して来い!」
「無理だ!俺、告白なんてしたことないし!」
「……ははぁ〜ん」
食満が意地悪そうに片眉を上げた。
「文次郎、お前怖いのか?」
「あぁ!?」
「告白してフラれんのが怖いんだろ!?そーだよなぁ、お前意外とノミの心臓だもんなぁ?」
「なにおぅ…!やってやるよ!俺があの娘とお、おつ、お付き合いしてやるよ!」
――ようやくその気になってくれたか…――
食満は小さく息を吐いた。
「燃えてきたぜ!ギンギーン!!」
――ふっ、ちょろい奴……――
「とは言ったものの…、告白ってどうするんだ?」
一人忍術学園の庭を歩きながら考える潮江。それを食満と伊作が後をつける。
「尾行っていつやってもドキドキするよね?留三郎」
「なんで伊作まで着いてくるんだ?」
「ふふ、楽しそうだから」
「……」
「…あれ?」
「どうした、伊作?…ん!?あれは…」
キョロキョロとする潮江へ一つの影が近づくのに二人は気がついた。
「誰に教えを乞うか…?まともに恋愛の相談をできそうな奴などいないしなぁ…。低学年は恋愛とは無縁そうだし…、滝夜叉丸は自己愛が強いし…、鉢屋三郎は俺の忍者の勘で恋愛に関しては掘り下げてはいけないような気がするし…。あぁ、どうすればあの娘を落とせるんだ!?」
潮江が頭をかかえ叫んだその時だった。
「落としたい人がいるんですか?」
後ろから声をかけられた。
「うぉっ!…あ、綾部かぁ!驚いた!」
「すみません。それより、落としたい相手がいるんですか?」
「そうなんだ!聞いてくれよ、綾部!」
先ほど食満と伊作が見た人影は綾部喜八郎だった。しかし二人は顔を見合わせ首をかしげる。
「綾部に恋愛なんて、一番遠そうだが…?」
「藁にもすがりたい思いなんだろうね?」
「まぁいい。しばらく様子を見てみるか…」
潮江がもじもじと話し出す。
「俺には、今すぐにでも落としたい相手がいるんだがどうしたらいいか分からないんだ。俺、今までそんな経験ないからさぁ」
綾部が驚いた、と目を丸くした。
「そんなの潮江先輩らしくない。勢いですよ!」
「勢い?」
「そうです。いつもの潮江先輩の勢いでいけばいいんですよ!僕も今までそうしてきましたよ?」
「そうなのか…。って、大人しそうに見えてお前なかなかやるなぁ!?」
「…そうですか?」
「で、成功率は?」
「百パーセント」
「すげーな!!でもさ、慎重にやらなきゃ相手に逃げられちゃうだろ?」
「ええ、落とすためには慎重かつ大胆にです」
「なるほど!」
「ふーむ、なかなかいい相談相手だったみたいじゃないか?」
「そうだね。綾部くんがそんなスペシャリストだったなんて意外だったよ」
食満と伊作はうなずき合った。