ギャグ小説の段
□夏休みの日記 4年い組 平滝夜叉丸
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「もう夏休みも終わりかぁ。今年も忍術磨きに、自分磨きに、蝉捕りにと忙しい毎日だったなぁ。
早く皆が、私の千輪の腕にさらに磨きがかかったのを見て驚き賞賛する顔が見たい!」
滝夜叉丸は自宅の裏庭で千輪を指で回しながら、憧れの眼差しでこちらを見る忍たまたちの顔を思い浮かべた。
「この夏休み、忍者の技術でも知識でも更に凄さを増した私…、ふふふ。
忍び装束の裏地も新調し、さらに豪華な薔薇と蝶々の柄にしてもらった!あぁ、今の私に実にふさわしい…。輝きすぎて皆が羨むだろう…いや、嫉妬さえ覚えるかもしれない。私ってなんて罪なんだ…。
宿題だって夏休みの初めにテキストは片付けたし、課外実習もやった。文武両道に加え計画性もある。ふふふ…完璧すぎる。完璧すぎて自分が恐ろしく感じる時さえある。愚かな民は今頃は親の手を借りて宿題にヒーヒー言っているのではないか?私が宿題を忘れるわけなどな…あ?ああぁぁあーーー!!」
裏庭に滝夜叉丸の絶叫がこだました。
「私としたことが!私としたことが!」
慌ただしく部屋に戻ると机の引き出しを思い切り開けた。そこには…、
「へぶっ!!(やっぱりー!!!)」
ひしゃげた一冊のノート。
「これはまずい…」
すっっかり忘れていた宿題が一つ。
思いおこせば夏休みが始まったころは毎日ちゃんとやっていたのだが、次第に面倒臭くなり…
「えぇーい!やってられるかあぁー!!」
引き出しに投げ入れたまま忘れていた。
『夏休みの日記 4年い組 平滝夜叉丸』
それはまるで、私を忘れた罰だとばかりに滝夜叉丸を見据えている。
――やばいやばいやばいやばいやばいやーばーいーよー…――
今更毎日なにをやっていたかなど覚えているはずがない。しかし、
「このままでは宿題未提出になってしまう…!文武両道のこの私にあるまじき行為!
そう、なにを迷うことがある?普通のことを書けばよいのだ、ごく当たり前の私の日常を…!」
滝夜叉丸は筆を持ち、よしっ、と一つ気合を入れた。
「…えぇーと、この日は何をしたかなぁ…?」
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