その他CP・物語の段

□Absolute Zero
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 「…この子だけは!」




 ―ガバッ
 「はぁはぁ…っ。…夢、か…?」
 勢いよく飛び起き、土井はあたりを見回した。目に映るのは見慣れた忍術学園の自室。
 「はぁ…はぁ…」
 もう何十回も、何百回も見ている夢。
 土井はこめかみから顎へ流れる一筋の汗を拭った。
 「…すー…ふーっ……」
 深く息を吸いゆっくりと吐き、今見た夢を思い出そうとするが思い出せない。夢とはそうゆうもので、起きた瞬間に忘れてしまう。
 「……」
 ドサリとわざと強く枕へと倒れこみ、
 「……」
 目を閉じ願う。
 ――もうあの夢は見たくない――
 …でも、
 ――また見られますように…――
 まだ陽の上がる前の薄暗い部屋には、同室の伝蔵のいびきと再び土井の寝息が響いた。


 「今日の授業はここまで」
 「「ありがとうございました!」」
 「わー!遊ぼうー!」
 「こらー!廊下を走るなー!」
 いつもと変わらない日常。いつもと変わらない生徒たち。

 いつもと変わらない私。

 「半助」
 「!?」
 廊下に出ると後ろから名を呼ばれた。
 「はい?」
 振り返るとそこには伝蔵が立っていた。学園内ではあまり呼ばれない下の名で呼ばれると、何か緊急事態かと思ってしまう。
 「どうされたんですか、山田先生?」
 「いや…大丈夫かな、と」
 「大丈夫?」
 「今日、悪い夢でも見たんじゃないか?」
 「?」
 「なにやらうなされていたではないか?」
 「……?」
 「…いや、覚えていないのならいいんだ。ただの夢なのだから」
 「…はい」
 そう言うと伝蔵は踵を返し廊下を歩き出した。
 「?」

 本当に覚えていなかった。
 「夢なんて見たかな?」

 …ただ、思い当たることはある。


 
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