ギャグ小説の段
□雪ん子〜side by 土井〜
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雪球は真っ直ぐに伏木蔵へと近づく。
すると、さっ、と人影が伏木蔵とからくり人形の間へ割り込み、伏木蔵を体ごと抱きしめた。
そして…
ぼふっ、と音をたて、雪球は伏木蔵を抱きしめる者の右肩へと当たり粉砕した。
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後の猪名寺乱太郎は語る。
あの時自分は、仲間が球に狙われる姿を目前に、自分は足がすくみ動けないでいたのだと。
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「くっ…」
伏木蔵を抱きしめる者は両膝を地面につき声を漏らした。
その者の腕の中から這い出し、伏木蔵が叫ぶ。
「雑渡さん!雑渡さーん!」
「…大丈夫かい、伏木蔵くん?」
「僕は大丈夫です!でも雑渡さんが…!」
「…私は、大丈夫だ…。こ…これくらいの、攻撃…なんて、どうってこと……くっ…」
「雑渡さん!これ以上喋っちゃダメです!早く保健室に!」
「また君たちに…、助けてもらうのかい…?…ふふ……。タソガレドキ組頭の、この私が…、一度ならず二度までも…」
「そんなこと今はいいじゃないですか!?早く手当てを…!」
「…伏木蔵くん……」
「はい…?」
「私は…君たちに会えて、変われたんだ…。
人を傷つけることに慣れていた…。合戦で仲間を失うことも、慣れていた…。…でも…、君たちに会えて、命の尊さ…仲間の大切さを、思い出させてくれた……。
…私は、君たちに感謝しているし、それを思い出させてくれた君たちを…、命に代えても守りたいと、思うようになったんだ…。だから…、……くっ…」
雑渡が顔を歪める。
「雑渡さん!これ以上喋らないで下さい!」
「…だから、伏木蔵くんが危ない目に合う時は…、必ず、私が君を助けに行くよ…。約束する…」
「そんな約束いりません!僕は…、僕は雑渡さんに生きていて欲しい!雑渡さんと仲良くお喋りしたいんです!だから約束してください!絶対に死なないと!」
「……っ…。…あぁ…約束、だ…」
雑渡は力なく右手の小指を立てると、絡めるように伏木蔵の右手の小指が指切りをした。
「約束です!雑渡さん!」
「……」
ふっ、と雑渡が笑ったかと思ったが、そのまま雑渡の瞼は静かに閉じられた。
「…っ、雑渡さん…雑渡さぁぁーーん!!」
静かに降り積もる雪に、伏木蔵の叫び声が吸収される。
「あぁ!こんなところにいた!組頭、帰りますよ!」
どこからともなく諸泉尊奈門がやってきて、雑渡の首根っこをつかんだ。
「ふふ。見つかってしまったね」
雑渡が目を開けニヤリと笑う。
「じゃあね、伏木蔵くん。私はタソガレドキ城に戻らなければならない時間だ」
「はい!楽しかったです!」
「私も楽しかったよ。それと、兵太夫くん」
雑渡が斜め後ろを見た。
「君のからくり人形作戦は素晴らしかった。私がいなければ、確実に伏木蔵くんと乱太郎くんを仕留めていたよ」
えへへ、と頭をかく兵太夫。
「では、また会おう。忍たま諸君」
雑渡と尊奈門は、ひゅっ、とその場から消えてしまった。
「雑渡さん、カッコいいなぁ…」
残された伏木蔵は雑渡の余韻に浸る。