ギャグ小説の段
□雪ん子〜side by 土井〜
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伏木蔵の雪球に気づき雷蔵は、ひょいとその雪球を避けたが…
―ぼふっ
「ぃやったぁ!!」
乱太郎が投げた雪球は見事雷蔵へ命中した。
驚きこちらを見た雷蔵はさらに驚き、声をあげる。
「雑渡さんっ!?」
その声に反応する留三郎と文次郎。
「なにぃっ!?雑渡昆奈門!勝負だぁぁ!」
「いや、雑渡昆奈門、俺と勝負だ!」
「俺だって言ってるだろ!」
「いいや、俺だ!」
「あぁん?」
「やんのか、こら?」
「……ふぅ。相変わらず血の気の多い子たちだね」
留三郎と文次郎がどちらが雑渡と勝負をするか揉めている中、一つの雪球が雑渡の元へ飛んでくると目の前の防御壁へぶつかり粉砕した。
「ん?」
雪球が飛んできた方へ目をやると、七松小平太が、へへへ、と笑い立っている。
「雑渡昆奈門。六年生はあいつらだけじゃないんだぜ」
「ほぅ…」
「いくぜ!いけいけドンドーン!」
小平太は雑渡へ向けて矢継ぎ早に雪球を投げつける。
「うわわ〜」
巻き添えを食らったのは乱太郎と伏木蔵。雑渡と共にいる彼らにも雪球は降ってくる。
「七松先輩!僕ら同じチームじゃないですか!!」
「今はそんなこと関係なーい!ドンドーン」
「乱太郎くん、伏木蔵くん。君たちはここを離れるんだ」
雑渡が二人に指示を出す。
「でも…」
「さぁ、早く」
雑渡に背中を押されて乱太郎と伏木蔵は後退する。
すると、こつん、と伏木蔵の踵に硬い何かが当たった
「ん?」
下を見ると、カタカタカタカタ…と音をさせてからくり人形が雪球を持っつ腕をゆっくりと回転させていた。
からくり人形の腕が体の真後ろまで回ると、ピタリとその動作を停止させ…
「ん?」
不思議そうに覗き込む伏木蔵に向かい、ひゅっ、とものすごい勢いで雪球を投げつけた。
「うわぁ!」
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後に猪名寺乱太郎は語る。
この時ほど世界がスローモーションで見えたことはない、と。
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からくり人形の手から投げ放たれた雪球は伏木蔵の顔をめがけ飛ぶ軌道にのった。
「うわぁ!」
伏木蔵が驚き目をつむり、顔を両腕で包み込むように守る。