ギャグ小説の段

□雪ん子〜side by 土井〜
2ページ/8ページ

 廊下を歩いていると、小松田と利吉が歩いているのに出くわした。
 一面の銀世界に利吉の白い肌が映える。
 ――こんな特別な日に利吉くんに会えるなんて…!!今日はいい日な予感〜――
 土井の心はくるくる踊り、顔中の筋肉のしまりがなくならないよう気をつけながら、努めて冷静に利吉の背中へ声をかけた。
 「利吉くんじゃないか」
 振り向く利吉に本日最高の微笑みを浮かべながら近寄る。
 「山田先生に会いに来たのかい?」
 「はい」
 「でも山田先生は今出張に出ていて、まだ戻って来ていないんだよ」
 「え?そうなんですか?」
 「あれ?今日の朝には戻られる予定では…?」
 小松田が首をひねる。
 「この雪で時間がかかってるのかもしれないね。もうすぐ戻られるんじゃないかなぁ。寒いから部屋で待つかい?」
 土井が促すと
 「それではお言葉に甘えて」
 利吉は素直に従った。
 「寒かっただろう」
 「ええ」
 「火鉢にあたろう」
 土井は自身と伝蔵の部屋の障子を開けると利吉を招き入れる。
 ――さて…――
 問題は小松田だ。小松田自身も利吉を案内する係りとして責任があるのだろう。ピッタリとついて来る。
 ――せっかく利吉くんと二人の時間ができそうなのに…。…そうだ!――
 土井はごく自然に小松田を遠ざける方法を思いついた。
 「小松田くん、利吉くんにお茶を煎れてきてくれないかい?」
 「あ!そうですね!」
 気づきませんでした、とばかりに小松田はぱたぱたと食堂へと小走りで向かった。

 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ