ギャグ小説の段
□雪ん子〜side by 土井〜
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廊下を歩いていると、小松田と利吉が歩いているのに出くわした。
一面の銀世界に利吉の白い肌が映える。
――こんな特別な日に利吉くんに会えるなんて…!!今日はいい日な予感〜――
土井の心はくるくる踊り、顔中の筋肉のしまりがなくならないよう気をつけながら、努めて冷静に利吉の背中へ声をかけた。
「利吉くんじゃないか」
振り向く利吉に本日最高の微笑みを浮かべながら近寄る。
「山田先生に会いに来たのかい?」
「はい」
「でも山田先生は今出張に出ていて、まだ戻って来ていないんだよ」
「え?そうなんですか?」
「あれ?今日の朝には戻られる予定では…?」
小松田が首をひねる。
「この雪で時間がかかってるのかもしれないね。もうすぐ戻られるんじゃないかなぁ。寒いから部屋で待つかい?」
土井が促すと
「それではお言葉に甘えて」
利吉は素直に従った。
「寒かっただろう」
「ええ」
「火鉢にあたろう」
土井は自身と伝蔵の部屋の障子を開けると利吉を招き入れる。
――さて…――
問題は小松田だ。小松田自身も利吉を案内する係りとして責任があるのだろう。ピッタリとついて来る。
――せっかく利吉くんと二人の時間ができそうなのに…。…そうだ!――
土井はごく自然に小松田を遠ざける方法を思いついた。
「小松田くん、利吉くんにお茶を煎れてきてくれないかい?」
「あ!そうですね!」
気づきませんでした、とばかりに小松田はぱたぱたと食堂へと小走りで向かった。