ギャグ小説の段

□兵庫水軍怖い話大会
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疾風「あっち〜」
蜉蝣「暑い方が夏らしくていいじゃねぇか」
疾風「だからってこりゃ暑すぎだろ」

夏真っ盛りの炎天下。船の整備の中、疾風は遮るものなど何なくこちらに降り注ぐ太陽を恨めしそうに睨んだ。
お気に入りの赤いバンダナを海水に濡らし頭に巻いたものの、最初こそ冷たくて気持ちが良かったがそんなものは直ぐに乾いてしまい、今では黒い髪を日差しから守る為の布と化していた。
船の甲板から海を覗くと、そこには二つの人影がゆらゆらと波間に揺れて見てとれる。それはまるで滑らかに海の中を自在に泳ぎ回る人魚のようで。

疾風「あーぁ、水練はいいよなぁ。海ん中潜ってられて」
蜉蝣「なに言ってんだよ。冬なんか見てられないじゃないか。寒くて唇真っ青になっちまって」
疾風「そりゃあそうだけどよぉ」
蜉蝣「夏は暑い暑いと文句を言い、冬は寒い寒いと文句を言う…」
疾風「なんだよ?」
蜉蝣「いや?だったらそんなお前を一気に涼しくしてやろうか、って思ってな」
疾風「??」

にやり、と不敵に笑う蜉蝣に、疾風はただ首をかしげるしかなかった。






間切「と、言うことで始まりましたー!!」
網問「第一回、兵庫水軍怖い話たいかーい!!」
東南風「わー!!」
航「パチパチパチー!!」
疾風「っ!!?」

本日の作業も終わり夏の長い陽も落ちた頃、蜉蝣の号令で船の甲板に集り、皆一つの円をかくようにあぐらをかき座った。
その中心には蝋燭が一本。
ゆらゆらと潮風に揺られ、それは不気味にも美しく男たちの顔を照らすのだった。
男たちのほとんどはその企画の趣旨を伝えられ、皆面白いとばかりにそこへ集まったのだが、ただ一人…もちろん疾風には企画の趣旨は伝えられていなく…。

航「いやぁ、ついに始まりましたねぇ」
間切「始まりましたねぇ」
網問「夏といえばこれ!」
東南風「怖い話で暑さを忘れましょー」
疾風「!!!いーやーだぁぁぁ!!!」

言うが早いか疾風はつんのめるようにその場を駆け出し船の中へ戻ろうとしたのだが、

鬼蜘蛛丸「疾風さん!」

それを引き止めようと鬼蜘蛛丸が疾風の腰に飛びついた。
鬼蜘蛛丸のナイスタックルが決まると、ビタン!と疾風はその場に崩れ落ち、しかし尚もジタバタと床を蹴る始末。

兵庫第三協栄丸「あっはっは!怖がりだなぁ」
疾風「お頭ぁ、こんな話聞いてないですぜ!」
舳丸「疾風さんは何て言われてここへ来たんですか?」
疾風「可愛い姉ちゃんの話をしてやるって義が言うからぁ!」
由良四郎「単純な奴だなぁ」
疾風「騙しやがって!」
義丸「騙してなんかないですよ?」
疾風「あぁ!?」
義丸「あとでた〜っぷりしてあげますよ?濡れ女子の話」
疾風「い〜や〜〜!!」
鬼蜘蛛丸「ちょ、ちょっと!兄貴そんなに暴れないで下さいよ!」
蜉蝣「とにかく落ちつけって、疾風」
疾風「お前が諸悪の根源のくせに…!」
蜉蝣「〜〜♪」


 
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