ギャグ小説の段

□みんなちがってみんないい
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 「わー!!」
 「たかーい!!」
 楽しそうに凧揚げをしている子供を横目に、航と東南風は忍術学園への届け物を終え帰路についていた。
 「無邪気でいいなぁ」
 「俺たちにもあんな時代あったっけな」
 バタバタと足音をたてて走り去る子供たちの後ろ姿を、自身の子供の頃に照らし合わせる。
 しかしここは林道。凧揚げをするには少しばかり木が多い。
 案の定凧の糸は長く伸びた木の枝に捕まってしまった。
 「あっ!?」
 「あー!!」
 子供たちは足を止め、今や風に乗って飛ぶことはなくなった凧を見上げた。
 「えいっ!」
 木の下で力いっぱい糸を引っ張ってみるがびくともしない。
 「とーれーなーいー!」
 糸を解こうと懸命に手元を左右に振り回すが、そんなことをしてはさらに糸が絡まるばかり。
 「あーあー、それじゃあダメだって」
 東南風が子供たちに駆け寄った。
 「ほら、ちょっと待ってな」
 よっ、と声を出すと身軽に木へと飛び乗り、あっと言う間に糸の引っかかっている枝へと登ってしまった。
 ちょいちょい、と絡んだ糸をほどいてやると下へ向かって叫んだ。
 「取れたぞ!今から凧を下に落とすから受け取れよー」
 「はーい!」
 凧を手からはなすと、風の抵抗を受けてゆっくりと舞い落ちる。
 下で子供が凧を受け取ったのを確認すると、東南風はそのまま枝から飛び降りた。
 「よっ、と…。お前たち、凧上げならもっと木の少ない場所でやるんだぞ?」
 「はい!」
 「ありがとう、おじさん!」
 「おじっ…!?」
 「おじさん、ありがとう!」
 口々に礼を言い子供たちは凧を抱えて走り出した。

 
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