─原作サイド・その後─

□雪
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「あ、リーダーっ」
日が沈みかけてきた夕方の西ゲートの前で、エルマルの復興作業の状況を確認に行っていたリーダーを待っていたら、遠くに馬に乗った人影が見えて。
「どうした?、ビビ。待ってたみてぇだが、何かあったのか?」
「ううん、そういうワケじゃないけど」
私の前で馬を止めたリーダーが馬上から訊いてきた事に答えたら、リーダーが馬から下りた。
「ねぇリーダー。明日雪を見に行かない?」
「雪?」
馬を連れてリーダーと階段を登りながら訊いた私に、リーダーが疑問を声に含ませて顔を向けてきて、
「うん、雪」
それに頷いて答える。
雨すら貴重な暑い砂漠の気候。
だからこの国に住む人達は、外の世界に出ない限り雪を見る事は一生ない。
私は一度アラバスタを出たから、バロックワークスの本拠地や任務で出向いた土地や、トニーくんの故郷のドラム王国ではみんなと一緒に雪を見たけど。
でもリーダーは今までアラバスタから外の土地に出た事はない筈だから、きっと生まれて今まで一度も雪を見た事がない筈。
だから一度、リーダーに雪を見せてあげたくなった。
リーダーと雪を見に行ってみたくなった。
「前にドラム王国っていう冬島の国でドルトンさんって人にお世話になった事、話したでしょ?」
「ああ。確かナミって航海士の病気を治す為に医者を捜してた時の島での話だろ」
「うん、そう。そのドルトンさんがそのドラム王国の新しい国王に推薦されたんですって。ドラム王国もサクラ王国って名前になったそうなんだけど、そのドルトンさんから同盟国に加入したいって申し出があったから、一度ドルトンさんの王になった姿も見てみたいし、女王の勉強としても、私が直接サクラ王国に行って、同盟の説明やサインを貰う事にしたの。サクラ王国は雪国だし、リーダーも一度雪を見てみたくない?。それに環境大臣見習いとしても、他の国の暮らしや町の環境を見ておくのもいいんじゃない?」
「…雪か…」
話してる間に宮殿の厩舎に着いて、柱に馬を繋ぎながら少し考えてるみたいにリーダーが声を出した。
「確かに雪なんて見た事もねぇしな…。機会があるんなら一度は見てみてぇもんだが…」
馬を繋ぎ終えて、水を飲む馬の頭を一撫でしたリーダーの顔が、体ごと私に向いてきて。
「けどいいのか?。同盟加入の手続きに行くんだろ?。正規の大臣ならともかく、俺はまだ見習いの立場だ。いくら勉強としてでも、そんな大事な交渉をしに行く時に同行していいんだろうか…」
最初は私を見ながら訊いてきて、最後は独り言みたいに視線を落としながら顎に手を当てて言ったリーダーの言葉に頷いて。
「大丈夫よ。ドルトンさんにはもう許可も貰ってあるから。以前にお世話になった時もそんな気難しい事を言うような人には思えなかったからお願いしてみたけど、快く承諾してくれたわ」
「、」
言ったら、またリーダーの視線が私に向いてきた。
「そうか…?。まぁ…向こうがいいと言ってるなら…」
「それに私の護衛人だって必要でしょ?」
私の説明に納得したリーダーに言葉を続けたら、リーダーの顔から瞬間で表情が消えて。
「え…、…まさか俺とお前だけで行くのか…?w」
次には少し驚いたみたいに軽く目が見開いて、その驚きの顔つきに疑問の表情も混じった。
「?。なに?、私と二人だけじゃイヤなの?」
「だってよ…w、王女が他国に行くのに付き人が俺一人って…w。イガラム…wさん達も行くんじゃねぇのか?w」
昔はイガラムの事も呼び捨てにしてたけど、王宮の要人の一人になったらイガラムも上司になったから、もう呼び捨てには出来なくて。
でもまだ"さん"付けで呼ぶのは慣れないみたいで、ちょっと詰まりながら訊いてきたリーダーに、
「でもあんまり大勢で行ったって却って迷惑じゃない?。船の関係でどうしても二晩泊まらせてもらう事になるから、私達だけの方がドルトンさんも気兼ねしないだろうし、それに行くのはリーダーと私だけじゃないわ。カルーだって行くもの」
「そりゃそうだが…w。…責任重大だな…こりゃあ…w」
言ったら、リーダーが少し顔を横に向けながら後頭部に手を当てた。
「大丈夫よ。もし賊に襲われたって、リーダーだって強いんだし、私だってもう護られるだけのお姫様じゃないもの。戦い方だって知ってるし、いざとなったらカルーに走ってもらえば賊だって追い付けないわ」
「…まぁな…」
そのリーダーの気を軽くする為に説得したら、少し納得したみたいにリーダーの口から声が漏れて。
もう一押しすれば承諾しそうなリーダーに、
「ね?。だから行きましょ?。ね?、リーダー」
「………。解ったよ」
畳み掛けたら、やっとリーダーの口から承諾の言葉が出た。
「その代わりコブラ王の許可が下りたらだからな」
「うんっ、じゃあ決まりっ」
「…w、だから許可が下りたらだからまだ決まりじゃねぇだろw」
「大丈夫っ。もうパパの許可も貰ってあるから」
リーダーの事だからそうくるんじゃないかと思って、前もって取ってあったパパの承諾の事を伝えたら、リーダーの顔が少し困惑の表情に変わった。
「……w。お前…、なら初めから俺は同行する手筈になってたんじゃねぇか…w」
「ええそうよ。だってリーダーに雪を見せたかったんだもの」
初めて雪を見るリーダーの反応が楽しみだったからどうしても連れて行きたくて。
パパの承諾さえあれば、リーダーにも特に反対する理由もないだろうし、自分でもちょっと強引だとは思うやり方だったけど、これくらいの事じゃリーダーは怒ったりはしないだろうから笑って言ったら、リーダーが呆れたみたいに少し笑って息を吐いた。
「…仕方ねぇな。なら同行させてもらうとするさ」
「うんっ」
やっぱり怒らなかった代わりにきた完全な了承に返事をして、明日の用意をする為にリーダーと二人で宮殿に入る。
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