─原作サイド・その後─

□償い
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「!。リーダー!!?」
今日も復興の作業を手伝おうと、町の人達と作業内容の確認をしていた時に聞こえた足音に、振り向いたら、そこにいたリーダーの姿に驚いて。
「リーダー!!」
「コーザ!!」
「コーザさん!!」
ケビくんやファラフラさん達と、慌ててリーダーに駆け寄った。
「どうしたの!?、リーダー!⊃⊃。一人でここまで来たの!?⊃⊃」
あの争いが終わって今日で五日目。
銃で撃たれたリーダーの傷は深くて。
全治三ヶ月は見ていないといけないくらいの重傷だった。
なのに、ユバからこのアルバーナに来るだけでも、馬を使ったとしてもここまで来るのは体に相当な負担になる筈だろう、そんな状態でここまで来たリーダーに、ユバで何かあったのかと思って。
「まさかトトおじさんに何かあったの!?⊃⊃。それとも賊が!?」
「…いや、そうじゃねぇよ」
町はまだあの争いの爪痕で傷付いていて、治安も安定してはいないアラバスタ。
そんな状況だから、盗賊に狙われる危惧もあって、そんな時には辺境の町や村から狙われる事も多いから、焦りながら訊いた私に返してきたリーダーの口元にほんの僅かに笑みが浮かんだ。
「俺にも手伝わせてくれねぇか。町の復興を」
「!?。何言ってるの!?。リーダーはまだ傷が塞がったばかりじゃない!!。ダメよ!!、そんな体で無理したら!!⊃⊃」
コーザの体が心配で、せめてあと一週間は安静にさせておかないとと、強くリーダーを説得しようとした時、リーダーの表情から笑みが消えて。
その顔が、私から、後ろで作業の手を止めている町の人達に向いた。
「手伝いたいんだ。この町を傷付けた反乱軍の一人として…反乱軍のリーダーとして…。今の俺に出来る償いがしたいんだ」
「………、…リーダー……」
「…俺はこの国の罪人だ」
「!。何言ってるの!?。リーダーは罪人なんかじゃ!!」
「いいや」
リーダーの口にした『罪人』の言葉を否定しようとした時、私を見ながら声を出したリーダーの言葉に言葉を止められて。
「真実を知らなかったとは言え、俺はお前の父親を…この国の王を疑い、この国を潰そうとした…。同じ国に住む同胞に剣を抜いた…。本来なら処刑されるのが当然の大罪人だ…」
「───リーダー…」
罪悪感の浮かぶリーダーの目を見ながら聞く言葉に、リーダーの後悔の深さが解って言葉にならなくて…。
リーダーを見上げる事しか出来ない私を見ていたリーダーの顔が、また私から町の人達の方に向いた。
「そんな俺がこの町を建て直す手伝いをする事に迷った…。悩んだ…。それでも何かしたかった。…頼む…。俺にも手伝わせてくれ…」
「………⊃。…………⊃」
コーザの願いに、コーザの体と町のみんなの反応を心配しながら振り返ると、その私に視線を移してきたみんなが笑みを浮かべて頷いて。
「ああ勿論構わねぇさ。無理はしないと言うのなら大歓迎だ」
「ああ、今は一人でも人手が欲しい所だからな」
「若いもんが手伝ってくれりゃあ、作業も捗る」
「……すまない」
「……⊃」
リーダーの申し出を、そしてリーダーがここへ来た事を嬉しがっているみたいに大らかに笑って言った町の人達と、それに嬉しそうな笑みで返したリーダー。
だから、リーダーの体は心配だけど、それ以上リーダーを止める言葉は言えなくて。

「リーダーっ!?」
柱と壁を修復する為の材木を取りに行こうとするリーダーに心配でついて行って。
なるべく軽い小さい板をリーダーに渡そうとしたら、掴んだ材木を数本肩に担いだリーダーに驚いた。
「そんな重いもの持たなくてももっと軽いものを…!!⊃⊃」
「構わねぇ……。これくらい、俺の犯した行いの重さを思えば軽いもんだ……」
「……。…リーダー……」
早くも切らしている息は、どうみても作業で疲れたものとは違って見える。
食いしばる歯と眉間に刻まれる幾本のシワ。
顔から伝いだした汗はまるで脂汗で、そんなリーダーの様子は、見ているだけでも体に相当な苦痛を感じてるのが解る。
(────)
でもそれ以上にリーダーから感じる苦痛。
この町を傷付けた後悔。
それが苦悶の表情で解る。
リーダーがどれだけ自分を責めているか。
どれだけ自分のした事を後悔しているか。
リーダーの心の強さがまだリーダーに笑顔を持たせているけど。
でもその内心には自責と後悔の念が渦巻いてる。
今のリーダーを見ていて、痛い程それが解る。
(─────)
止めたい。
リーダーの体の事を考えたら、すぐにでも止めなきゃいけない。
…でも止められない。
これはリーダー…コーザにとっては罪滅ぼし。
復興を手伝う事で、コーザは自分を救ってる。
自分を戒めてる。
自責の念を持ちながら、その自責の念で町を元に戻そうとしてる。
償おうとしている。
…だから、止められない…。
それがリーダーにとって救いになってるのなら。
私には止められない。
痛む体を押してでも。
この町が好きだから。
私と同じ、このアラバスタの人達と同じ。
コーザもこの国が好きだから。
反乱軍に加わるくらい、反乱軍のリーダーになるくらい。
この国が好きだから、護ろうとした。
そして、今も護ろうとしてる。
自分も加わっていたこのアルバーナに付けた傷跡を、治そうとしてる。
だから…私も誰も、リーダーを止められなかった…。

「あれ?。リーダーは?」
「ああビビ」
毎日ユバから来るのは大変だろうと、宮殿前の広場に張られたいくつかの野営テント。
その中の、砂砂団のメンバーが使うテントを覗いたら、コーザはいなくて。
「…それがよ…⊃」
ケビくんがなにか言葉を濁して。
「?。どうしたの?」
訊いた私に、ケビくんやオカメちゃん、みんなの目が、同じ一点の方向を向いた。
「コーザ…自分は必要以上にこのアルバーナの土を踏んでいい人間じゃねぇって…。いくら私らが言っても聞かないで、西ゲートの入り口に一人で…」
「え…」
西ゲートの方を見ながら言うオカメちゃんの言葉に、思わず私もそっちを見た。
「ビビ、悪ぃが見てきてくれねぇか。あいつ、なら俺達もそこに行くって言ってもそれも止めてくるからよ…」
「うん、解った」
ケビくんの頼みに頷いて、西ゲートに足を向ける。
ケビくんに頼まれたけど、私もリーダーの事は心配で。
体の事も、それ以上にリーダー自身の事も。
(………)
リーダーが持ってる後悔の念。
自分が傷付けた町を直す為に、つらい体に自分で鞭を打って。
でもこのアルバーナに留まる事もしないくらい、深い…深い後悔。
クロコダイルさえこの国に来なければ、リーダーがそんな後悔をするような事も、この国の平和が壊される事もなかったのに。
(────)
頭に浮かぶ、私を嘲笑っていたクロコダイルの記憶に怒りが滲んで。
もう終わった事、クロコダイルはルフィさんがこの国から追い出してくれた。
でもあの男が残した災厄という毒の爪痕は、まだ反乱に加わっていた人達に残っている。
未だリーダーを苦しめてる。
「────」
平和は戻っても元には戻せない、人の過去、心の傷。
私達の平和を傷付けて、大切なものまで奪って、まだその毒の傷跡でリーダーを苛んでいるクロコダイル。
「────」
未だこの国に災いを残している男へ湧く怒り。
「──そんな毒には負けないんだから…!」
その怒りに手を握りしめながら、気持ちを奮い立たせる。
私は負けない。
この国はそんな毒には負けない。
リーダーだって強いんだから。
強い人なんだから。
だから乗り越えてる。
後悔を持っていても、ちゃんと前に進んでる。
進む力を持ってる。
「この国の人はみんな強いんだから」
そしてこれからはもっと強くなる。
傷が出来た分、今までより強く。
ルフィさん達がそうだった。
どれだけ戦いで傷付いても、その傷の大きさ以上に強さを増して。
この国だって同じ。
私だって、リーダーだって同じ。
傷付いた分、それ以上に強くなる。
(うん…!)
奮い立たせた気持ちを更に強く噛み締めて。
西ゲートに着いて下を見ると、階段のすぐ側に一つだけ張られたテントを見付けた。
中にいるんだろうリーダーの事を考えながらゲートの階段を下りて、出入り口から微かに光が漏れてるテントに近付いた。
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