短編集

□もみあげ
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「あ、おかえ…り……」
「…………」
『ちょっと散髪屋に行ってくる』って出て行ったコーザに、いつも通り毛先を整えるくらいだろうと思ってて…。
「…どうしたの…w。それ…w」
私がついでに頼んだプリンが入ってるコンビニの袋を持ってリビングに入ってきたコーザを見ながら、ちょっと驚いた。
出て行った時はあった横髪が無くなってて、代わりにもみ上げになって帰ってきたコーザ…の髪型に唖然とする。
「…馴染みの店に行ったら、ちょっと違う髪型にしてみるかって訊かれて…。任せたらこんなになった…」
ちょっと不本意そうな物言いと、何かを諦めたような顔つきで言いながらプリンの入った袋を差し出してきたコーザから、それを受け取る。
「…。でも似合ってるわよ?。そのもみ上げでも」
「…お世辞はいいさ。ていうか慰められる程似合わねぇのか…」
「お世辞じゃないわよ。ほんとに似合ってるわよ?」
「…………」
あんまり気に入ってないのか、益々なにかを諦めた顔をしてリビングから出て行こうと背中を向けたコーザに言ったら、表情が消えた顔が私に向いてきて。
そのコーザの顔の側面に手を伸ばしてみた。
「コーザのもみ上げって結構逞しいのね。ずっと横の髪の毛も伸びてたから解らなかったけど」
「……。…もみ上げを逞しいとか誉められても嬉しくねぇ…w」
コーザは猫っ毛だから、もみ上げも柔らかくて。
短くなってもサワサワして手触りのいい感触を楽しみながら言ったら、微妙そうな顔つきで愚痴を言ったコーザ。
「でもほんとの事だもの。それに似合ってるのもほんとよ?」
「…………」
そのコーザに言ったら、コーザの顔から表情が消えて。
「前の髪型も良かったし似合ってたけど、この髪型だとなんか前よりかっこよく見える∨」
「……。……///」
私の事を見てたコーザの、ほんとにかっこよさが上がった顔を見ながら笑ったら、コーザの顔が少し赤くなった。
「でもちょっと前の髪型、切る前に写真撮っとけばよかったわね。まさかこんなに髪型変わって帰ってくるとは思わなかったから」
「…俺だってこうなるとは思わなかったよ…w」
ちょっと力の無い声で言ったコーザのもみ上げから手を離して、手を引いて一緒にソファーに座って。
機嫌直しに、買ってきてくれたプリンの蓋を開けて、一口目をまだちょっと納得してない顔つきをしてるコーザにあげた。


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