─原作サイド・その後─

□雪
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「あ、あれよリーダー!。あの島よ!?」
「…案外小さい島なんだな…」
見え始めた島影に、懐かしくなって指を指しながらリーダーに言った。
あの、島に桜が咲いた時に幹になっていた三つの山。
今でもはっきり覚えてるあの時の光景やあの島での出来事を思い出しながら、トニーくんの故郷の島に段々と近付いていく。
「わぁ…、停泊所まで作られてる」
まだ遠目にしか見えないけど、あの時メリー号を停めた、側に小さな滝があった場所には、港と言うには規模は小さいけど、ちゃんと停船場所が整えられているのも見えて。
「…この島がサクラ王国か…」
「ええそうよ。これがトニーくんの故郷の島よ」
「…真っ白だな……」
大分近くなってきた、雪に覆われた島をどことなく茫然とした表情で見てるリーダー。
私が初めて雪を見た時と同じ。
雪が降らないアラバスタから出た事がなかったリーダーにとって、生まれて初めて見る雪の景色。
夜の砂漠の寒さに似た雪国の冷えた空気に息も白くなってきて、用意してあった防寒着を着込んでいる間に船の船首が船着き場に入った。
「ではビビ様、我々はここで。迎えは明後日の昼頃になります」
「うん、お願いね、ペル、チャカ」
「コーザ、ビビ様を頼んだぞ。ドルトン王にもしっかり顔を覚えてもらえよ」
「ああチャカ、解ってる」
「じゃあ行ってきます」
航海中の警護についてきてくれたチャカとペルにあとの事を任せて、リーダーとカルーと一緒に船を下りて。
停船場を離れた船を見送る。
「じゃあ行きましょ」
ちゃんと整備されて雪が退かされている船着き場の床板から、舗装されていない、他の景色と比べると少なめに雪が積もっている道へと、リーダー、カルーと足を一歩出した。
「…不思議な感覚だな…」
「うん…」
雪を踏む感覚。
砂漠の乾いた砂を踏むのと似てるけど、でも砂と違って足が沈む上に、ザクザクキシキシするような、不思議で楽しい感覚もする。
「ふふっ」
初めてこの国に来た時に一度知った感覚だけど、あの時はナミさんの病状とアラバスタの事で頭がいっぱいで、こんな感覚を感じてもいなかった。
でも今は雪の景色をゆっくり見られる時間も、気持ちの余裕も充分にあるから、アラバスタでは知れない雪の感覚もゆっくり味わえて。
今まで数度しか体験した事がない感覚を楽しみながら、私の左隣を歩くカルーを見た。
「カルー、足冷たくない?」
「グワッ」
人間が素足で歩けばやけどするくらい熱い砂漠の砂の熱にも対応出来るように皮膚が厚くなってるカルーの足も、雪の冷たさには慣れてはいないから。
特注の皮靴を作って履かせてみたけど、ちゃんと防寒にはなってるみたいで安心した。
「そのドルトンって国王は、ビッグホーンって町で待ってるのか?」
カルーの体に纏わせた防寒布をちゃんと整えてたら、右からリーダーの声がして。
「うん。この道を真っ直ぐ行けばすぐに着くわ」
伝電虫での電話ではドルトンさんは船着き場まで迎えに出るって言ってくれたけど、少しリーダーと雪国の景色をゆっくり見ながら歩きたかったから、ビッグホーン村で待っていてくれるようにお願いした。
「なら急ぐぞ。あまり待たせるのも悪いからな」
「大丈夫よ。ドルトンさんもゆっくり雪を堪能しながら来ればいいって言ってくれたから」
「…そうか…?」
リーダーと話しをしながら、前にドルトンさんや町の人達に案内されて歩いた道を歩いて。
(…、)
少し雪景色を見ながら歩いていたら、なんだか足元を気にしながら歩いてるリーダーに気付いた。
「どうしたの?、リーダー。靴が合わない?」
「いや…靴はいいんだが…」
私もリーダーも雪国用の靴を取り寄せたけど、片足を上げてその靴の裏を見ながら答えたリーダーが、今度は靴底を地面に擦り付け始めた。
「なんか雪ってのは砂と違って少し滑るみてぇな感じがして歩きづれぇな…」
「うん。今日は少し雪も薄くて凍ってるような感じだし、地面がこんな時は気を付けて歩かないとって雪山の本に…きゃ!!」
「Σ!?。うわっ!!w」
「いたっ!w」
「でっ!w」
「「────」」
「グエw」
気を付けて歩いてたのに足が滑って、思わずリーダーのコートを掴んじゃったから、リーダーまで足を滑らせて。
二人で地面に尻餅をついて無言になった。
「ご…ごめん…w」
「………気を付けてって言ってた人間がこれとはな…w。しかも人を巻き添えにして…w」
「だっだって滑ったんだものw、しょうがないじゃないw」
「はあ…w。…ほら掴まれよ」
「ん…」
先に立ち上がって、カルーに掴まりながら手を差し出してくれたリーダーの、その手に掴まって立ち上がる。
「あ〜尻が痛ぇw。しかも冷てぇ…w」
「…そう言えば雪が少ない時は雪が積もってる所を歩いた方がいいんだった…w」
「そういう事はもっと早くに思い出してほしかったよ…w」
「………w」
尻餅ついたお尻は痛いし冷たいし、横からはリーダーのため息混じりの文句は聞こえてくるし。
雪は滑るから、ここがちょっと雪の困る所w。

「そう言えばお前はどこで初めて雪を見たんだ?。この島だったのか?」
「…ううん」
しばらく黙って歩いてた時にリーダーから来た素朴な疑問に、少し気分が沈みながら、それでも悪気があっての質問じゃないから笑って返した。
「…私が雪を初めて見たのは、スパイとして忍び込んでいたバロックワークス本部の部屋からだった…」
「ぁ……」
「グエ…⊃」
リーダーの質問に答えたら、カルーが心配そうに顔を寄せてきてくれて。
「うん、大丈夫よ、カルー。ありがとう」
私の気持ちを察して心配してきてくれるカルーに笑って頭を撫でて、あの頃の事を思い出しながら前を向いた。
「…初めての雪だったから、少しそんな状況で見る事になったのは悲しかったけど、あの頃はそんな悲しさに浸っている状況でもなかったし…。今考えたらやっぱり悲しいと思うけど…」
「…悪い…。余計な事訊いちまったな…」
「ううん。そんな思い出になっちゃったならもう仕方ないし。それにもうあんな悲しい思い出になるような雪の見方はしないだろうし」
『さっきは尻餅ついて痛い思い出が出来たけどね』ってリーダーに笑って言ったら、リーダーも申し訳なさそうな表情に少しだけ笑みを浮かべた。
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