※帝光パラレル ※黒子君がバスケしてません ※世話焼きむっくん ※↑苦手な方はご注意下さい あのバニラの甘い香りを漂わせている彼は何者なんだろう。 部活終わりに着替えながらそんなことを考えていた。 先日、運命の出会いを果たした紫原はかなりの頻度で彼を思い返していた。それも無自覚に。 無自覚ゆえにもやもやしたものが胸の中でくすぶっている。くすぶっているがどうしていいのか分からずそのもやもやを享受するしかなかった。 そしてまた彼を思い返す。 その繰り返しだった。 着替えが終わり、おつかれさまーと言い残し部室を出て校門に差し掛かると微かに甘い香りが紫原の鼻をかすめた。そして、その香りに誘われるがまま校門から出れば目の前に飛び込んできたのは。 「ちょっ、黒ちん!!こんなとこで行き倒れないでよー」 慌てて駆け寄るとそこには先ほどまで紫原が思い返していた黒子テツヤが道端でいつものように行き倒れていた。 紫原は迷うことなく両腕で黒子を抱きかかえた。 この寒空の下でなぜこうも彼は行き倒れるのか。しかも今回はコートにマフラー、イアーマフに手袋と完全武装していた。 なに黒ちん行き倒れる気まんまんなのまじかよおい。 紫原は黒子を抱きかかえたまま家までの道を歩いていく。実は紫原の家の隣は黒子の家だったりするのだが、その事実を知ったのはつい先日。黒子と衝撃的な出会いを果たした日だった。 それからというもの紫原は登下校を黒子と共にしていた。 なぜなら彼は己に無頓着過ぎた。 彼の影の薄さと体力のなさが災いしてか校庭で倒れていようが、廊下で倒れていようが、道端で倒れていようが誰も気が付かないと言う。 なにそれまじこわい。 でも影の薄さのおかげで遅刻もないと言う。 なにそれうらやましい。 そんな感じでのらりくらりと中学まで生きてこれたものだからこれからも大丈夫だよね〜と彼も彼の両親もなぜかポジティブに解釈してしまった。 おかげで紫原は常に黒子をまうい棒と同じくらいに気に掛けるようになってしまった。 紫原は灯りの点いていない黒子家を素通りし、自分の家の玄関を開け、そのまま自室へと入った。黒子をベッドに寝かせ空調を入れて部屋を暖める。そして椅子に座ると息を吐いた。 ベッドに目を向ければすよすよと気持ちよさそうに黒子は眠っている。人の気も知らないで今、寝返り打ちやがった。 紫原はベッドに近づき黒子からイアーマフに手袋を外し、そしてマフラーとコートを脱がした。 自分の大きな掌で黒子の頬を触るとマシュマロのような柔らかさ。掌をそのままに親指だけで艶のある唇を優しく撫でる。 顔を近づけると仄かに香るバニラの香り。 あぁ、好きだなー。 そして、そのまま唇を重ねた。 「ねぇ、黒ちん。起きて」 今度は少しだけ食む。 柔らかい彼の唇が甘く感じるのは自分の欲目だろうか。 そしてもう一度重ねると閉じていた瞼が微かに揺れる。紫原はベッドに座ると黒子の腕を掴み自分の膝の上に座らせ、小さな体を抱きしめた。 「ん、紫原、君…ですか?」 「そうだよー。黒ちん、おはよー」 「えーと、おはよう、ござい…ます?」 「うん、おはよー」 紫原は黒子を抱きしめる。いい笑顔で抱きしめる。 「む、紫原君!痛いです!!」 「だよねー、痛くしてるもん」 「い、痛いです!!ボクが、行き倒れ、てたから怒ってるんですよね!!い、痛ッ!!謝りますからすみませんでした!!だ、だから力を緩めてください!!紫原君!!」 腕の中でもがく黒子のお願いに紫原は力を緩め、黒子を見つめる。 滑らかな白い肌に艶やかな薄桃の唇。 そして大きな瞳の中に紫原が映っている。 あー、やっぱり可愛いなー。 そう思うと堪らず今度は優しく抱きしめる。 「もうオレを心配させないでよね、黒ちん」 「はい、すみませんでした。これからはちゃんと気を付けるようにします」 いやいや、無理でしょ。 それが出来ないから行き倒れてんのになぜ気付かねぇの?つか、もうこれ側に置いといたほうがいいんじゃね?そのほうがいろいろと楽じゃね?うん、そうしよー。 「どうかしましたか、紫原君?」 「どうもしないよー。ねぇ、黒ちん。オレの側から離れないでねー」 「はい、分かりました。紫原君を信じていますから」 そう言って微笑む彼の心地よいその声に胸が震える。 「うん、黒ちんはオレを信じてたらいいよ」 あー、オレ、やっぱり黒ちん好き。 そう自覚してからの紫原は休み時間ごとに黒子のもとに通い詰め、抱きかかえては黒子の髪やら首筋にキスをする。ときには耳や喉にも。 黒子はくすぐったいですなんて笑っていたが紫原の目は笑っていなかった。 目は口ほどに物を言うとはこのことなんだなぁと誰もが思った。そして触らぬ神に祟りなしと言う言葉を誰もが胸に刻んだ。 ***** 世話焼きむっくんを目指したが世話を焼ききれてないという残念な結果に。 そして企画に参加させて頂きありがとうございました。 企画サイト『僕は、天の邪鬼。』提出 20141126 |