オレ幸せなんだと思うんスよ。 だって心から尊敬できる人と心から愛せる人が一緒なんてスッゴい確率だと思わないっスか! だからオレ、どうしても黒子っちに言いたいことがあるんスよ。 だから聞いてくれないっスかね。 黒子っちとお付き合いが始まって三ヶ月。もちろん恋人としてのお付き合いっスよ。 毎日のように誠凛に通いつめ、校門で黒子っちをお出迎え。最初はミスディレられたり、スルーされたりもしたが徐々に黒子っちの態度は軟化して行き、黒子っちからマジバに行きませんかと初めてのお誘いを頂いた時には全身全霊で神様に感謝したくらいだ。 お陰で黒子っちに頭大丈夫ですかと呆れた目をされたけど。 オレはそれでも幸せだった。 今日の部活が終わり黒子っちに今から迎えに行くねとメールをすると電車に乗り込んだ。そして周りを自分からシャットアウトするためにイヤホンを付け流れる景色を眺めている。 この景色も見慣れたものだ。黒子っちと付き合う前から今までずっと見た、そしてこれからも見続ける景色。 オレから黒子っちへと続く想いの景色だ。 そんなことを考えていたら誠凛最寄りの駅に着いた。 改札口を抜け、また黒子っちに駅に着いたっスよ。今から誠凛に行くから待っててねとメールをする。 すると手にしていたスマホが鳴り、画面には黒子っちからの着信が表示されていた。 「もしもし、黒子っち?どうしたんスか?」 『黄瀬君、誠凛には来なくていいですよ』 珍しい黒子っちからの着信に若干驚きながら出れば驚愕の言葉を聞かされた。 「ちょ、黒子っち!?それ、どういうことっスか!?もう直ぐ黒子っちに会えるのにー!!オレ、楽しみにしてたんスよ、黒子っち!!」 『黄瀬君、うるさいです。ボクは誠凛には来なくていいと言っただけで別に会わないとは言ってません』 「え?」 『それにね、黄瀬君。ボクはもう君の近くにいますよ』 「え?…え?」 『はやくボクを見つけて下さい』 ちょ、それなんてホラー!? つーか、勘弁して下さい黒子っち。 夜とは言え、駅ともなればそれなりに人数は多い。その中で黒子っちを探せとか難易度マックスとしか言えないっス。 スマホを耳に当てたまま周りを見渡すと耳元からクスクスと笑い声が聞こえる。 「ちょ、黒子っち。な〜に笑ってんスか。こっちはこれでも結構、必死なんスよ?」 『すみません。必死な黄瀬君がなんだか可愛くて笑ってしまいました』 柔らかくて優しい声がオレの耳をくすぐる。向こうからはオレが見えてるのならオレからも見えるはず。 オレは目を凝らして黒子っちの心を現したかのようなあの優しい色を探すがあの黒子っちがそう易々と見つかるはずもない。それでも探していると突然、背中に軽い衝撃と暖かな温もりが寄り添う。 首を捻り、背中を窺うとそこにはあの優しい色が見えた。オレは小さく笑う。 「な〜に黒子っち。オレ、探してたんスけど。先に出て来ちゃダメじゃないスか」 「黄瀬君がさっさと見つけてくれないから悪いんです」 なんて言う黒子っちがめちゃくちゃ可愛いくてオレは持ってたスマホをポケットにしまい、黒子っちの手を掴んで駅から出る。 人影の少ない場所まで来るとオレは我慢出来なくて黒子っちを腕の中に抱きしめた。 「ねぇ、黒子っち。オレ、黒子っちにどうしても言いたいことがあるんスよ。聞いてくれる?」 抱きしめた黒子っちに問い掛ければ黒子っちは小さく頷いた。 「オレ、幸せなんスよ。黒子っちに出逢ってから本当に幸せなんス。色褪せたオレの毎日はあの日見た黒子っちの姿に、言葉に衝撃を受けて生まれ変わったんスよ。毎日がスッゴい楽しかった…バスケして皆と寄り道したり黒子っちと話したり。それがスッゴい楽しかった。だから黒子っちが居なくなって少しだけ…ほんの少しだけっスよ?黒子っちに裏切られた気がしたっス。あ、今はちゃんと解ってるっスよ。黒子っちがオレを、オレらを裏切ったわけじゃない。オレが、オレらが黒子っちを裏切ったんだって。ゴメンね、黒子っち。辛い思いをさせてゴメン。そしてオレを好きになってくれてありがとう。バスケを続けてくれてありがとう」 黒子っちはオレを見上げると小さく笑う。 「黄瀬君、バスケは楽しいですか?」 「もちろんっスよ。黒子っちとやるバスケは特にね」 「そうですか。ならボクも幸せです。キミがバスケを続けてくれて楽しいと思ってくれているならそれだけでボクは幸せです。ありがとう、黄瀬君」 黒子っち、それは反則っスよ。 そんなことを言われたらオレ、嬉しくて泣きそうっスよ。 オレはもう一度、黒子っちをギュッと抱きしめ『I Love You』を口にした。 「黒子っちに出逢えて本当に良かったっス」 ***** ちょっと大人っぽい黄瀬君とちょっと乙女っぽい黒子君を目指し迷走した結果こうなった…orz 20140207 |