非公開

□君は幼馴染み
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昔、一度だけかなたと喧嘩した。


原因は、「サプライズのための嘘」だった。



12、ファーストキスと昔の過ち



「かなた、誕生日おめでとう。」

「ん・・・あっ、そっかそうだよ今日誕生日じゃん!!」

「なんだ、忘れていたのか?」


朝、かなたを起こしてから学校に向かう。


このポジションは、彼女に一番最初におめでとうと言えるから、
ある意味彼女から起こせといわれてよかったと思った。


「誕生日って、なんかいっつも忘れちゃうんだよなー・・・」

「今日は、帰りに買い物に行くぞ。ケーキと・・・あと、かなたの誕生日プレゼントを買いに。」

「あははっ、じゃぁ誕生日プレゼント考えておかなきゃだなー」

「あぁ、そうしてくれ。」


その日一日学校のいたるところでハッピーバースディソングが聞こえ、
「おめでとう」に対して「おうっ!サンキュー!!」なんて返してるかなたを見かけた。


喧嘩したあの日、
俺は、姉と二人で彼女へのサプライズを考えていた。


『蓮ニーあそぼー!!』

『あ・・・いや、今日は放課後ばあちゃんの家に行かなきゃ行けなくて・・・』

『そっか・・・残念だなー』


そんな小さな嘘で、
俺は、彼女と初めて喧嘩した。


喧嘩したというよりも・・・彼女を怒らせた、が正しいか。


『姉さん、これなんてどうだろう?』

『む、蓮ニのクセにセンスいいわね・・・』


俺は、罪悪感で一杯だったが学校が終わってすぐに帰宅して姉と買い物に来ていた。

もちろん、彼女の誕生日プレゼントを選ぶためだ。


『蓮、ニ?』

『っっ!?』

『なんで、ここに居るの?おばあちゃんの家に行くって・・・嘘?なんで・・・蓮ニ』


そこで、お使いで買い物に来ていた梨駈とばったり出くわしてしまったのだ。


『かなた、違うんだっ、これは・・・かなたっっ!!』


かなたは泣きそうな顔をして、すぐに走り去ってしまった。


『姉さん、これ、買っておいて!あ、かなたが好きな色は赤だから、赤いラッピングで!!』


俺は、姉に梨駈に選んだものを渡し、追いかけた。


かなたは、近くの公園のベンチで座り込んで泣いていた。


『かなた。』

『・・・。』

『かなた、俺は、かなたの誕生日を祝おうと思ってたんだ。』


そう言うと、かなたはばっと顔を上げた。


やっと顔を上げてくれたから、嬉しくて、
サプライズじゃなくなっちゃったけど、かなたの涙を指で拭いながら、


『誕生日おめでとう、かなた』


そういって、当時の俺は何を思ったのか、かなたのおでこにキスをした。


それが、仲直りの合図。


「蓮ニー」

「ふっ、今日は少し早くないか?」

「そりゃ、蓮ニと二人で買い物ってなかなか無いし、テンションも上がるよ!」


そんな会話をしていたら、
レギュラー陣が驚いたようにこっちを見ていた。


「なんじゃ、羽柴ちゃん参謀と誕生日デートするんぜよ?」

「うっわ、出たよリア充・・・二人仲良く爆発しろ!!」


別にデートではないし、残念ながらリア充でもない。

二人に『違う』と言おうと思って息を吸ったら、後ろにぐいっと引っ張られる。


「ね、もう蓮ニ連れて行ってもいい?」

「お、おう、大丈夫だと思うぜ?」


かなたは俺の腕を掴んだまま確認を取る。


「よし、じゃぁ、これから蓮ニ私が独り占めするから、急を要するような電話やメールしてきたらぶっ殺すって言っておいて、よろしくー。」


かなたはへらりと笑いながら敬礼をして、
「おつかれっしたー」なんて言いながら俺と手を繋いで歩く。


「ねぇ、覚えてる?公園で仲直りしたこと。」

「あぁ、勿論。初めてお前を怒らせてしまったからな。」

「今日、あの公園行きたいんだけど、付き合ってくれますか?やなぎくん?」

「ふっ、無論だ。今日は、俺はお前に独り占めされているのだろう?」


お前になら、いくらでも独り占めしてもらって構わない。


仲良く手を繋いで歩きながら、
プレゼントはどれがいいだとか、でもあれもいいなんていいながら歩く。

ケーキは当然ショートケーキで、チョコレートはいらないなーなんて。


「蓮ニ、どれが良いかな?」


落ち着いた雑貨屋に入ると、彼女はそう俺に聞いた。

自分で選ばせるために一緒に買い物に来たのに、俺に聞かれては元も子もないような気がする。


「指輪でも贈ってやろうか?」

「・・・。」


ぽろりと出た言葉。

いつもなら流される言葉に、かなたは何か引っかかったようで俺を黙って見つめた。


「・・・かなた?」

「・・・蓮ニ、」


違和感を感じて、名前を呼ぶと、すぐに明るい笑顔をくれた。


「そういう事は、冗談で言ったら駄目だぞ?」

「ふっ、練習だ練習。」

「あ、あれ可愛いよ蓮ニ!!」


梨駈が選んだのは、
赤い簪。


「私、髪短いからなぁー・・・」

「かなた、こっちを向け。」


簪の隣には、赤いコサージュ。

振り返ったかなたに合わせてやると、かなたは驚いたようにこちらを見上げていた。


「あぁ、やはりよく似合うな。かなたは色が白いし、髪が真っ黒だから赤が良く映える。」


かなたの唇が、何かを言いたそうに震えた。


でも、一度きっちりと閉じられて、
コサージュを持つ俺の手をそっと避けた。


「まだ、髪短くて似合わないから来年それは来年なっ!」


何故か、抱きしめたい衝動に駆られる笑顔だった。
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