非公開

□恋ってやつは、
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放課後の教室。

もうすぐ文化祭だからって、忙しなく走り回っていた君が、

今机に伏して、全く動かない。




1、些細なことをきっかけに生まれるらしい




「ねぇ、もう最終下校時間過ぎてるけど?」


生徒会やってて、文化祭の委員もやってて、

頭も良いし、運動も出来るし、優しくて面白くて、うちのクラスだけじゃなく、誰からも愛される少女。


そんなコイツが嫌いだった。


頼まれたらすぐに引き受けて、

仕事は増えていくばかりで、

どこか一箇所に止まっているところなんて、この頃見てはいなかった。


「ほら、起きないと怒られるよ?」


彼女は先生からも人気があるから、

きっと怒られることなんて無いのだろうけど・・・

なんとなく、そういう台詞しか出てこなかった。


「ん・・・」


俺の声に反応して、震えるまつげ。

コイツ、こんなにまつげ長かったんだ。なんて・・・。


「あ、れ・・・?」

「おはよう、羽柴。」

「・・・伊武君、だ・・・」

「早くしないと昇降口閉められるよ。まぁ、」

「へっ?!あっ、帰らなきゃっ!!」


まだ大丈夫なんじゃない?って言おうとしたら、

凄い勢いでカバンを引っつかんで、

反対の手で、俺の手を掴む。


「ぇ、ちょ」

「行こうっ、伊武君!!」


油断していた。


「はぁ・・・間に合った・・・」

「ねぇ、羽柴」

「ん?なぁに伊武君」

「いつまで手繋いでるの?」


運動が得意な瀬戸だから、これくらいの距離で息切れしてるのがなんか不思議だった。


「えっ、あ、ゴメンねっ!!」


ぱっと離された手。


「起こしてくれてありがとう、私、家あっちだから・・・」


きっと、「じゃあね」と続くんだろうなぁ・・・

なんて思いながら、ついさっき離れた手を握りなおす。


「送ってく。」

「ぇ、でも・・・」

「体調、悪いんでしょ?」


あーあ、俺って今凄いいいやつじゃない?
そう、例えるなら


「伊武君は、王子様だね・・・」










(馬鹿じゃないの?)
(えっ、あ、ゴメン・・・)
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