非公開

□片思い!
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受験当日。


私の心は、切なさで一杯だった。


それは、朝のメール。




『羽柴、受験頑張れよ。
落ち着いて、分からないところがあれば、深呼吸しろ。



お前なら、絶対に大丈夫だ。』




息抜きデート(?)から、何度も柳君には助けてもらった。

どんなに挫けそうになっても、柳君は落ち着け、深呼吸しろ、と支えられた。


そして今日だって、
苦しくて、切ないけれど・・・私の背中を押してくれる。


私は、誰のためでもない、
柳君のために・・・頑張らなきゃいけない。

たとえそれが、柳君と離れる選択であっても。


それでも私は、私に、嘘を付き続けるのは限界だった。


―プルルルルルル



『ピッ・・・羽柴?』


「柳君・・・。」


『どうした?』



あぁ、いつもの柳君だ・・・。



「柳君・・・私、受験なんかしたくない。」



ずっと、隠してきた思いを、今、全て貴方に打ち明ける。

それで嫌われたって、失望されたって、構わない。

でも、伝えたいの、貴方だけに、本当の私を知って欲しい。



「受験勉強だって、やりたくなかった。友達ともっとたくさん思いで作りたかった。
塾なんて行きたくなかった。バイトして、もっと経験たくさん積んで、世間勉強したかったの。」



親の思い通りのお人形は、もう、やめたいよ。



「私、立海大に行きたかった。私の好きな人が通う・・・柳君が通う、大学に行きたかった・・・。」


『っ・・・羽柴。』


「ねぇ、それでも柳君は、私は、受験するべきだと思う?背中を押してくれる?


その声で・・・名前を呼んで『頑張れ』って、たった一言で良いの・・・言って、くれますか?」



あぁ、涙が止まらない。


貴方が背中を押してくれるなら、私は、その言葉どおりに・・・。



『・・・言うわけないだろうっ、俺は、俺はっ・・・』


「柳君?」



―ピッ



電話が切れて・・・あぁ、私は嫌われたんだと、そう思った。

涙は、まだ止まらない。


携帯を、抱きしめる。

もう、恋は、終わりにしよう。



「かなたっ!!」



突然後ろから呼ばれた自分の名前に、びくりと肩が跳ね上がる。

この声は、確認せずとも誰だか分かる。

低くて、頭の中を全部埋め尽くしてしまうような、甘い声。



「柳・・・君・・・」



ゆっくりと振り返れば、息を切らしてる柳君が立っていた。



「すまないが、俺は、お前の背中を押してやれない。」



柳君が、近づく。

私はそれをぼんやりと見つめていた。



「かなた、」



ぐいっと、腕を引かれて、バランスを崩せば柳君が受け止めてくれた。

しっかりと抱きしめられて、涙がはらりとまた落ちる。



「好きだ。

だから・・・受かるなと、心の底から思ってる。」



片思いは終わりにしよう。






3、その声で名前を呼んでよ






(お題提供:くちばし 様)
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