非公開

□君は幼馴染み
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「そういう事は、用談で言ったら駄目だぞ?」


冗談でも、今日は、信じたくなってしまうから。


「ふっ、練習だ練習。」


きっといつか、私以外の誰かに言うべき台詞。

蓮ニの力になるのなら、いくらでも練習台になってあげるから、
今日だけは、そんな優しい言葉を私に投げちゃ駄目。


「あ、あれ可愛いよ蓮ニ!!」


話を逸らしたくて、目に入った赤によっていく。

それは美しい簪。

赤で、桜が散ってある簪。


これが似合う女性は、きっと蓮ニの隣にピッタリだろう。


「私、髪短いからなー・・・」


髪が長くたって、似合いはしない。


「かなた、こっちを向け。」


蓮ニが私を呼んだから、振り返ったら頭に当たる蓮ニの手。


「あぁ、やはりよく似合うな。かなたは色が白いし、髪が真っ黒だから赤が良く映える。」


嬉しそうに呟く蓮ニを見つめたまま、
唇が震える。


あぁ、駄目だ、勘違いしちゃ駄目だ、
私は、蓮ニの幼馴染みで、親友で、ただ、それだけなんだ。


「まだ、髪短くて似合わないから来年それは来年なっ!」


来年、君は、私の隣に居るのだろうか・・・。




「懐かしいなここも。」

「そうだなー・・・蓮ニ、あの日さ、仲直りした後私が言ったこと覚えてる?」

「あぁ、覚えている。」


蓮ニが迎えに来てくれて、
涙を拭ってくれた。


頭に優しいキスをくれた。


『帰ろう、かなた。』

『蓮ニ・・・私は、蓮ニの嘘を信じるよ!』

『え?』

『蓮ニの嘘は優しいから、全部、全部、蓮ニの嘘を信じるよ。』


蓮ニの私のための嘘は、優しくて、
だから、私は蓮ニの全てを信じることにした。


「ねぇ、蓮ニ。」

「ん?」

「蓮ニは、ずっと、一緒に居てくれる?」


だから、貴方の優しい嘘を今だけは、私に頂戴。


「かなた、」


いつか、捨てられるような私でも良いから、
いつか、離れ離れになる関係でも良いから、
今日だけは、今だけは、貴方の嘘で私を騙して。


「好きだ。」

「ぇ・・・」


でも、私の待っていた言葉とは違う言葉が私に投げられた。

私はその言葉を取り損ねて、
驚いて蓮ニを見つめた。


「好きだ、かなた。」

「蓮、ニ?」

「答えは『はい』か『Yes』しか認めない。」


そして、唇を奪われる。





((これで、ずっと一緒に居られる。))
((「『はい』か『Yes』しか認めない」は蓮ニの優しい嘘だ。))
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