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□君は幼馴染み
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今日から連休。

蓮ニのお母さんとお父さんは二人とも2泊3日でご旅行。

蓮ニは午前中部活で午後には帰ってくる。
お姉さんは夕方帰ってくる。


8、勝手知りすぎたる他人の家


「それじゃぁ、かなたちゃんお願いねっ」

「はぁーい。旅行楽しんできてくださいねー」

「かなたちゃんが居れば安心ね、あなた」

「そうだな。かなたちゃんお土産楽しみにしておきなさい。」

「うわめっちゃ楽しみです。いってらっしゃい。」


早朝から柳家にお邪魔している私です。


ちなみに、何故私が蓮ニのお母さんとお父さんをお見送りしているかというと、
娘息子が朝から居ないから・・・。


「さ、洗濯でもするかね。」


時刻は10時30分。

まだお昼の用意をするのは早いし、私が任されているのは洗濯と料理くらいだ。


買い物は、蓮ニが帰ってきてからにしよう。


「今、柔軟材これ使ってるんだ。お母さんらしいなぁ〜」


鼻歌を歌いながら、慣れた手つきで洗剤を入れていく。

私は見た目も行動も言動も男勝りだ。


だがしかし、家事全般得意である!!(どやぁ


あ、なんか一人でやってたら目にごみが・・・。


「あ、ご飯炊かなきゃ。」


洗濯機を回している間に、台所にいって、棚から米びつを出す。


ちなみに、何故家事が得意かというと、父母ともに小さい頃から家に居ることのほうが少なかった。

小学校低学年までは、仕事場に付いていっていたが、高学年ともなれば自分が邪魔なことくらい分かる。


「ご飯セット完了!」


あ、夕飯炊き込みご飯とかいいな・・・。


小学校高学年になると、家に一人で居ることが増えて、
私は『料理』と言う分野にかんしてどんどん貪欲になっていった。


情報発信源は主に3分クッキングである。


「あ、洗濯終わった。」


洗濯物をかごに移して、外にでる。

空は快晴だ。

気持ちのいい風が私の短い髪を揺らs・・・今日風強くない?


「前髪上げるか・・・。」


洗濯物が飛ばないように気をつけながら、
思いっきり背伸びして洗濯物を干していく。

この天気なら、今日はすぐに乾くだろう。


「あ、もう12時になるじゃん!!」


私は急いで台所に戻って、
何の躊躇も無く冷蔵庫をあさる。


「んー・・・おにぎりだな。」


昆布と梅干と、あとおかか。


大皿を出してきて、炊き上がったご飯を握っていく。


どうせ二人だ、多少手抜きでもいいだろう。

それでも、誰かに食べてもらうというのは、嬉しいものだ。


「はい完成!」


よしよしなんていいながら、ラップをかけてテーブルにおいておく。


「蓮ニまだかな〜」


ポツリとつぶやいたら、玄関が開く音が聞こえた。


「ただいま。」という蓮ニの声に、玄関まで走って「おかえり、蓮ニ!」と迎える。


「かなた、すまないな。」

「いいえー、さ、着替えてきなよ。ご飯にしよう。」

「あぁ。」


やかんに水を入れて、火をつける。


お茶っ葉と蓮ニの湯のみと私のマグカップを取り出す。

ちなみに私のマグカップはお姉ちゃんがいつでも私がこれるようにとプレゼントしてくれた。


「随分と、手際がいいな。」

「あ、蓮ニ。なーんだ、今日は和装じゃないんだね。」


振り返ると、台所に立つ私を見つめる蓮ニがいた。


「和装の方がよかったか?」

「いや?洋装でもかっこいいよ、蓮ニ。」

「ふっ、ありがとう。」


VネックのTシャツに、カーディガン。

裏地がチェックのチノパンは、私とお姉ちゃんで去年買った。


「そのズボン、ピッタリになってよかった。」

「お前が、二つも大きいサイズを買ってきたときはどうしようかと思ったがな。」

「お姉ちゃんの案だよ。すぐに成長する弟は、今に合わせて買ったってすぐはけなくなるんだからちょっと大きいの買っておけばいいのよ。ってね。」


お茶を入れて、テーブルに向かい合わせに座る。


「では、」

「「いただきます」」


二人で合掌して、私はどれがどの具かを説明する。


「これが、梅で・・・って、蓮ニ聞いてる?」


蓮ニは私の手元を見ないで、何故か私の顔を見ていた。


「なんか・・・顔についてる?」

「いや?」

「なら、説明を聞け。」

「聞いている。」


聞けっつーか見ろよ手元を。

意味無いだろう聞いていたって見た目同じだぞおにぎり。


「まったく・・・もう一度説明するぞ?これが、」

「なぁ、かなた。」

「今度は何だよ?」


視線を上げれば、頬杖を付いてこちらを楽しそうに・・・いや、嬉しそうに、か。

見つめている蓮ニが居た。


「どした?」

「いや、こうしていると・・・夫婦みたいだな。」


蓮ニは、時々こういうことを言う。


「まぁ、昔から入り浸ってるからね、蓮ニの家に。」

「いつでも嫁に来られそうだ。」


言葉で負かそうと思ったって、蓮ニにはかなわない。

私はこういうとき、笑ってやり過ごすしか道は無いのだ。


「ははっ、考えておくよ、蓮ニ君?」


まだ、もう少しだけ、この関係を壊さないで。




((また逃げられたか・・・。))
((明日は帰ってきたら「ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?」って言ってやろう。))
((何か良からぬことを考えてる気がする・・・。))
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