非公開

□君は幼馴染み
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「はぁ・・・とりあえず部屋に行くぞ?」

「わぁっ!!」


雷が鳴るたびに止まってしまうかなたを歩かせるよりも、
抱き上げて運んだほうが遥かに早い。


「れ、蓮ニ?」

「次からは、学校から帰るときもこうやって運ぶか・・・。」

「そ、それだけは勘弁して・・・。」


流石に恥ずかしいのか、
顔を俺に見せないように肩に頭を埋める。


自分の部屋について、床に下ろしてやる。


「何しょぼくれた顔してる?」


頭を撫でてやれば、涙目で見上げてくるかなた。

今は俺の理性に感謝してくれ。


「そういえば、」


かなたの隣に腰掛けながら、思い出話を持ちかける。


「かなたが初めて泣いたのは、今日みたいな日だったな。」

「え?」


その日は雨が降っていて、
外は真っ暗だった。

家に帰ってゆっくりしていたら、かなたのお母さんが「うちの子、来てませんか?」と聞きにきた。


「雷が苦手でどこかで動けなくなっているかもしれません、なんて言われたときは、流石の俺も驚いたぞ?」

「うっ・・・だって、怖いから・・・。」


放課後学校で見かけたことを思い出した俺は、傘を引っつかんで学校まで走った。


「階段の影で、震えながら座り込んでいたお前を見つけたのも俺だったな。」

「うぅっ・・・」


ぼろぼろと涙を流しながら震えていた小さな少女を見つけ出したとき、
心が、震えるような気がした。


『れ、蓮ニ・・・ひっぐっ』

『ハァ・・・ハァ・・・見つけた・・・。』

『こ、怖かったぁっっ』


飛びついてきたかなたを抱きとめて、
めいっぱい抱きしめる。


『もう大丈夫だ。』


「一緒に帰ろうと言ったら、腰が抜けて立てないと来た・・・。まったくお前は「ぬぁあああもうその話はお終い!!」


顔を真っ赤にして、クッションで殴られる。


「蓮ニ意地悪!」

「何を今更。」


その時、一番大きな雷の音が聞こえた。


ガシャーン!!!


「きゃぁ!!」


そしてばちんっという音と共に消える電気。


「む・・・停電か・・・。」

「れ、蓮ニっ・・・;;」


急に真っ暗になったことにさらに驚いたかなたが、あたふたとしている様が気配で分かる。


「かなた、こっちだ。」


腕を掴んで落ち着かせる。


―ゴロゴロゴロッ


「ぴゃっ!!」

「っっ?!」


小さな悲鳴と同時に、身体にどんっという衝撃を受ける。


受け止めきれずにしりもちをつけば、
自分の足の間に座り込み、小さく震える彼女の身体は全て自分に委ねられていた。


電気がつく気配はない。


抱きしめようと肩にそっと触れると、
ビクリと震えて、さらにきつく抱きついてくる。


「かなた?」


なるべく優しく名前を呼んで、
抱きしめて頭を撫でてやる。


「かなた・・・俺が居るから大丈夫だ。」


かなたは小さく震えたまま、必死に俺に抱きついていた。


しばらくすると電気が復旧し、
明かりがつく。


あぁ・・・想像以上にこの体勢はまずい・・・。


「・・・かなた、電気ついたぞ?」


すぐに身体を離そうと抱きしめていた腕を緩めるが、
かなたは離れようとしない。


「かなた?」

「れん、じ・・・もうちょっと・・・だけ・・・」


小さく震えた声で言われれば、断れるはずも無く・・・


俺はもう一度小さな彼女を抱きしめなおす。


「はぁ・・・怖がりだな・・・」


しっかりと抱きしめて、こっそり頭にキスをした。





((これくらいは許されるだろ?))
(蓮・・・ニ・・・・)
(眠っていい、傍に居てやる。)
(ん・・・)
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