非公開

□君は幼馴染み
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「あ。」


久しぶりに昔買ってた漫画でも読もうと、
クローゼットの中をあさっていたら出てきた知恵の輪。


色んな漫画を床に平積みにしたまま、それを掴んで走る。



3.懐かしのおもちゃ



「こんにちはー」


慣れた手つきで、柳家の玄関を開けた。


「あら、かなたちゃんじゃない!」

「ども〜、お母さん、蓮ニはー?」

「あの子なら、午前中部活だって言ってたわよ?」


今日は一日じゃないのか。

ならよかった。


「蓮ニ待っててもいいですか?」

「いいわよ、後でお茶持って行くわね〜」

「お構いなくー」


そして、何の躊躇も無く家に上がった。

もちろん靴を端にそろえるのを忘れずに。


「蓮ニの部屋も、久しぶりだなぁ〜」


相変わらず、いいにおいがする。

落ち着く、蓮ニの匂い。


「にしても、懐かしいの出てきたなぁ〜」


カチャカチャと知恵の輪を解こうと試みる。


「むー・・・」


机にだれながら、回してみたり、押してみたり引いて見たり・・・。


「あー、無理だ。」


お母さんが入れてくれたココアを飲む。

あー、ウマ


「あ・・・」


ふと知恵の輪に小さな傷を見つけた。


「・・・これ、イニシャルだ。」


知恵の輪の片方には蓮ニのイニシャルが、

もう片方には、私のイニシャル。


「何で、彫ったんだっけ・・・。」


いろいろ忘れてしまったけれど、

昔も、此処で私は知恵の輪を前に頭を悩ませていたんだっけ。


『あーもう解けない!!』

『解けない知恵の輪なんて無いぞ?』

『知ってるよ!!絶対解いてやるんだから!!』


ひどく暖かい何かに包まれている。

何かに寄りかかって、頭の中はふわふわとまだ半分夢の中だ。


「・・・解けた。」


静かな低音が聞こえて、

ゆったりと瞼を上げる。


「ん・・・」

「おはよう、かなた。」


私は、いつの間にか眠っていたようだ。


「蓮ニ・・・ごめん、肩借りてた」

「いや、構わない。」


ベッドの上にあった毛布で私は包まれて、

いつの間にか帰ってきていた蓮ニの肩を借りて熟睡していたらしい。


「ほら、解けたぞ。」

「本当だ・・・」


二つに分かれた知恵の輪。

片方を渡される。


「俺たちは、知恵の輪だ。」

「え?」


唐突な蓮ニの言葉に、隣に座る蓮ニを見つめる。

蓮ニはこっちを向いて、笑っていた。


「全く同じものが組み合っていて、外れないと思いきや思った以上に簡単に外れることがある。
外れてしまって、もう戻らないだろうと思っていても、必ず一つになる。」


確かに・・・あぁ、そうか、だからイニシャルを彫ったんだ。


そして、この話は昔したことがある。

あの頃の私はそれを笑顔で受けていた。

でも、今は、
知恵の輪の関係は少し違って見えた。


「蓮ニ、それ、多分違うよ。」

「ん?」

「だって、私は一度もこの知恵の輪を解いたことも、戻したこともないから。
私と蓮ニは知恵の輪だけど、この関係を解くのも戻すのも、私じゃない。蓮ニじゃん。」


その言葉に、驚いて開眼する蓮ニが珍しくて、

声を上げて笑った。





(かなたからは、、、離れない、ということか?)
(離れないっていうか、私からは離れられないんだよ。)
((無自覚なのだろうか・・・))
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